「遠隔でも、患者家族の背中を押すことができる」

有限会社ノーティス(独立行政法人 労働者健康安全機構 登録相談機関)

  • リウマチ科
  • 小児科

小児科医であり、リウマチ専門医でもある武井修治先生(鹿児島大学名誉教授)は、個人や企業に対するカウンセリング、健康相談などを手掛ける有限会社ノーティスにて、小児のリウマチ・膠原病(PR: Rediatric Rheumatology)に関する医療相談を行っています。この医療相談は、クロンを活用したオンラインでのサービスも実施しており、全国から相談を受けています。

オンライン医療相談を行うに至った経緯をお教えください

私は、鹿児島で小児リウマチ・膠原病の診療に40年以上携わってきたこともあって、若年性特発性関節炎(JIA)親の会「あすなろ会」という患者会の顧問も務めています。この病気の小児科専門医は少なく、そのため、遠方から鹿児島まで治療に来られる小児患者さんがもともと多い状況でした。そこで、遠方の患者さんの通院負担を減らすために、遠距離でも患者さんご家族とつながることができるシステムが何かしらないものだろうか、ということはずっと考えていました。そうした折、クロンの存在を知り、初診から遠隔で「診療」することは制度上できないけれど、「医療相談」という形ならば可能なことが分かり、2019年の夏頃からオンライン医療相談サービスの準備を始めました。

当初は患者会の一つのツールとして活用できたらと思っていましたが、保険診療ではない枠組みですので費用が発生してしまいます。そこで患者会に相談があった場合、このオンライン医療相談サービスを紹介してもらう仕組みにして頂き、現在に至っています。

オンライン医療相談を受けるにあたり気を付けられていることはありますか

医療相談は、直接診療を行うわけではなく、限られた時間内で相談に応えるという形になりますので、事前に情報収集や資料準備などをしっかり行いうことを心がけています。オンラインで相談が始まると、事前に集めた相談内容に関する資料を示しながら、専門医としての経験や一般的な医療情報などを患者さんに提供しています。患者さんごとに、状態や困っていることが異なるので、それに即した的確な回答をするために、どのようなニーズがあるのかを事前にとらえておくことがとても重要だと思っています。

小児リウマチは成人のリウマチと鑑別や治療が異なることがあると伺いました。小児リウマチ患者さんを取りまく環境はどのようなものなのでしょうか

小児リウマチは、大人のリウマチと似た症状もあり、同じような治療を行うことも多いのですが、大人とは病態が異なったり、治療に使用する薬剤によっては大人には無い副作用が生じたりします。例えばステロイドは子ども特有の副作用として成長障害があります。子どもの成長というのは非常に大事なことなので、成長を阻害する薬はなるべく使わない、どうしても使わざるを得ない場合は工夫して使用します。子どもの成長というものに配慮しながら治療する、ということは小児科医だからこその視点であり、そのため、小児リウマチの専門医による診察は患者さんにとって大切になります。

現在、小児リウマチ専門医は日本で80名程度です。専門医は人数も多くない上に偏在しているというのが現状で、県に1人以上いる地域もあれば、県に1人もいないという地域も存在します。したがって、専門医にアクセスするために物理的な距離がある場合、患者さんとご家族への負担はとても大きいものになります。

私は昔から九州を中心とした西日本エリアの先生方から、メールなどで小児リウマチの患者さんに関する相談を受けていました。そのような経緯から、私は西日本の各地域で小児リウマチの患者さんを診ている先生方の診療を支援し、必要があれば患者さんを適切な専門医に繋ぐネットワークを15年程前から構築してきました。各地域の先生と専門医がネットワークを持つことで、いわゆるD to D with Pを実施することができますし、患者さんにとっても遠方の専門医まで行かずとも適切な治療を受けることができるようになります。ただ、このようなネットワークが全国にある訳ではないのが現状です。

最近あった医療相談の事例についてお教えください

ある小児患者さんとご家族の医療相談をクロンを使ってお受けしました。その患者さんは小児リウマチ性疾患の一つとして診断をされていたのですが、ご家族は病気や治療に対して不安を抱えておられ、患者会に相談したところ、私が行っているオンライン医療相談サービスをご紹介頂き、ようやく私とつながることができました。オンラインでの相談では、事前に記入して頂いた問診票を確認しながら、ひとつひとつ症状や不安な点についてお話を伺い、最終的には通院可能なエリアにいる、信頼のおける小児リウマチ専門医へおつなぎをすることができました。

一般的に患者さんご家族はどうしても、医療者に対して質問しづらかったり、遠慮してしまったりという方が多いです。頑張ってご自身で治療法や薬などを調べられている方が多いのですが、なかなか正しい情報にたどり着けず、情報の信頼性も判断が難しく、不安を持たれることが多々あります。そのため、専門家にアドバイスを求めるということは自然なことですし、大事なことであると思います。

私がオンライン医療相談を受けた患者さんご家族も同じような状況でしたので、親御さんには「親というものは、子どもさんを診てもらっている先生にどんなことを聞いても良い存在なのですよ」とオンラインの画面を通じて、背中を押してあげました。様々な質問を通じて不安を解消し、おつなぎした専門医のもとで、最適な治療を続けられるといいなと思っています。

また、これは最近のケースですが、コロナ禍にかかりつけの小児患者さんとご家族との相談で活用しました。私が外来診療を行っている鹿児島大学病院にはまだオンライン診療のシステムが導入されていません。コロナ禍で他県にお住まいの患者さんがなかなか外出することができない状況になってしまい、その患者さんの症状などの相談に、クロンを活用しました。普段は私どもと連携している地元の病院で治療され、年に数回、休みを利用して鹿児島大学を受診される子どもさんとそのご家族ですが、以前から診てきた患者さんでしたので、手元に多くの情報があり、安心してオンライン上で相談を受けることができました。

オンライン医療相談やオンライン診療に対する、課題や期待感についてお教え下さい

コロナ禍でオンライン診療やオンライン医療相談は増えましたが、コロナ後の世界においても、対面診療と組み合わせたハイブリット型で続いていくと思っています。小児リウマチにおいては皮膚症状や肌の色見の確認は、診察において重要な要素の一つになります。そういった意味でオンラインでは画面の小ささや、部屋の暗さなどがネックになることがあるため、医療者側から患者さんやご家族に指示を出すなど工夫が必要だと感じます。さらに、診察に触診を行うこともありますが、現在はオンライン診療でそれを補完する技術はありませんので、今後技術革新が進み、触診や聴診データがオンラインで確認できるようになれば最高です。

また、小児リウマチ専門医と、かかりつけ医と患者さんをオンラインでつなぐ、言うなればD to D with P を実施することで、患者さんの負担がなく、より専門的な治療を受けられるようになることを期待しています。

Clinic Information

  • 有限会社ノーティス(独立行政法人 労働者健康安全機構 登録相談機関)
  • ホームページ:https://www.notice-eap.com/product/kojin_pr/
  • 住所:〒890-0052 鹿児島県鹿児島市上之園町34-20-101
  • 電話番号:099-259-9477

Doctor Profile

武井 修治(たけい・しゅうじ)

鹿児島大学名誉教授