ゾフルーザは効かないって本当?耐性ウイルスについて詳しく解説

  • 【読み】 ぞふるーざ
  • 【呼称】 -

※2024年2月時点の情報を元に作成しています。

ゾフルーザは、塩野義製薬によって開発された新しい作用機序を持つインフルエンザ治療薬です。錠剤を1回服用するだけで治療が完結する利便性の高い薬として知られる一方、薬が効かない「耐性ウイルス」が一時期話題になったため「ゾフルーザは効かない」という噂も広まっています。

ただし、「ゾフルーザが効かない」という噂は誤った認識で、近年のインフルエンザ治療においてはメリットも多く、欠かすことのできない薬としての地位を確立しつつあります。医師の指示に基づいて適正に使用すれば、噂の原因となった耐性ウイルスについても、心配しすぎる必要はありません。

正しい知識を身につけ、辛いインフルエンザ症状の軽減に役立てていきましょう。

 

ゾフルーザ(成分名:バロキサビル)とは

 

対象となる病気・症状

ゾフルーザは、これまでのインフルエンザ治療薬にはなかった新しい作用機序でインフルエンザウイルスの増殖を抑制し、A型・B型インフルエンザウイルス感染症の症状を改善します。また、感染者との接触など感染の可能性が生じた際に投与することで、A型・B型インフルエンザウイルス感染症の発症を予防します。

 

ゾフルーザで期待できる効能・効果

インフルエンザを発症すると、咳、喉の痛み、頭痛、鼻づまり、熱っぽさや寒気、筋肉や関節の痛み、疲労感といった症状があらわれます。臨床試験の結果、ゾフルーザを感染初期に投与することで、これらの症状が「なし」または「軽度」に改善するまでの時間を1~2日間程度短縮することが判明しています。

また、臨床試験の結果、インフルエンザの発症から48時間以内に、その同居人や共同生活者にゾフルーザを投与したとき、その後インフルエンザ陽性となった同居人や共同生活者の割合は投与しなかった場合と比べて低く、予防効果が確認されています。

 

ゾフルーザが効かないとされる理由

耐性ウイルスが高い割合で検出されたことがある

ゾフルーザは、2018年3月に日本での販売が承認されました。販売開始後初めて本格的に使用された2018~2019年にかけてのインフルエンザ流行シーズンでは、1回だけの服用で治療が完結する利便性が好まれ、市場シェアは約4割を占める大ヒットとなりました。

しかしその一方、このシーズンに国立感染症研究所が実施した「薬剤耐性株サーベイランス」という薬の効かない「耐性ウイルス」に関する調査では、ゾフルーザの効かない変異ウイルスが、他のインフルエンザ治療薬と比べて高い割合で検出されました。

 

日本感染症学会からの提言

ゾフルーザの耐性ウイルスが高確率で検出されていることを受け、日本感染症学会は2019年10月に「~抗インフルエンザ薬の使用について~」という提言を発表しました。その中でゾフルーザの使用について、積極的な投与を推奨しない以下の表現がされました。

  • ・12歳以上では、臨床データが乏しい中で、現時点では、推奨/非推奨は決められない。
  • ・12歳未満の小児では、低感受性株の出現頻度が高いことを考慮し、慎重に投与を検討する。

 

耐性ウイルスについての報道

日本感染症学会からの提言が発表されるや否や、ゾフルーザの耐性ウイルスについてのニュースが各種メディアで報道されました。その結果「ゾフルーザは効かない」という誤解が一般の人にまで広まっていったのです。

ゾフルーザの耐性ウイルスがここまで大きなニュースになったのは、ゾフルーザへの関心が非常に高かったためです。特に医療現場では、従来のインフルエンザ治療薬とは異なる作用機序を持つ久しぶりの新薬として、ゾフルーザに大きな期待が寄せられていました。

 

耐性ウイルスを極端に恐れる必要はない3つの理由

現時点で耐性ウイルスは流行していない

現在では、ゾフルーザの耐性ウイルスを極端に恐れる必要はないとされています。

国立感染症研究所のその後の調査では、耐性ウイルスは引き続き一定の頻度で検出されているものの、検出率は2018~2019年にかけてのインフルエンザ流行シーズンほど高くはありません。また、耐性ウイルスが流行している兆候も確認されていません。

 

日本感染症学会からの提言が変更された

直近での耐性ウイルスの流行状況をふまえ、2023年11月には感染症学会からの提言も更新されました。

その中で、従来「推奨/非推奨は決められない。」とされていた12歳以上への投与については「タミフルと同等の推奨度で活用することが可能」に変更されました。ただ、12歳未満の小児に対する投与は「今後も慎重な投与適応判断が必要」という表現がされています。

 

タミフル耐性ウイルスの歴史

耐性ウイルスの問題を考える上で参考になるのは、タミフルの効かない「タミフル耐性ウイルス」の歴史です。一時期、タミフル耐性ウイルスが高確率で検出され、ゾフルーザと同じく報道でも大きく取り上げられました。しかし、タミフル耐性ウイルスはその後検出されなくなり、大きな問題とはなっていません。タミフルは、現在もインフルエンザに有効な薬として多く使われています。

 

まとめ

耐性ウイルスの存在が明らかになった以降も、ゾフルーザはインフルエンザ治療薬として国から正式に承認されています。そのため「ゾフルーザは効かない」という噂は誤った認識です。

1回の服用で治療が完結するゾフルーザは、従来の薬で生じていた「飲み忘れ」や「吸入の失敗」といった問題がなく、メリットの多い薬です。今後も、耐性ウイルスに関する正確な情報を確認しながら、適切に使用されることが望まれています。

 

 

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【参考文献】

https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/6250047F1022_1_16/

https://www.shionogi.com/content/dam/shionogi/jp/news/pdf/2020/02/200221.pdf

https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/content/900004360.pdf

https://www.niid.go.jp/niid/ja/influ-resist.html

https://www.kansensho.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=37

https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/guidelines/teigen_231130_nashi.pdf

 

【執筆者】


薬剤師:大西真理
ドラッグストア併設調剤薬局の薬剤師。薬局長として薬局全体の管理、教育等に従事し、管理薬剤師としても活躍。広域病院から地域密着型クリニックまで幅広い内容の処方箋応需経験を持つ。

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