前回ご紹介した下図の中でも、本記事では、不整脈や脳梗塞の予後、COPDや精神疾患などの治療に着目します。
近年では、より高度な技術を要する聴診器や心電図でも、オンラインでデータを取得し、遠隔診療を行えるようになってきました。AMDは聴診器や心電図などの医療機関用幅広い遠隔デバイスを展開しています。自宅での需要も高まっており、iVital Connect社のHealth Patchはその名の通り胸部に小さなワイヤレスパッチを貼り付けて心拍数、心拍変異度、呼吸速度などのバイタルをパソコンやスマホに転送し、モニタリングするシステムを提供しています1。
引用元9To5Mac記事
また、同様にパッチを用いたiRhythm社のZIO Patchはメモリ機能も備えており、心電図も測定できるため、データを2週間測定し、主治医が診断・治療に利用することができます2。Kito+もスマホに連動させて使うデバイスで、スマホケースのような形状をしていてとてもお手軽な形状ですが、心電図をはじめ、心拍、呼吸数、酸素濃度など幅広いバイタルを測定できるため、Guardian誌でも「Top5 ヘルスケアデバイス」に選ばれています3。
引用元UNWRAPP記事
オーストラリアのベンチャー企業CliniCloudはスマホやパソコンと連携させて使えるデジタル聴診器と体温計を提供しています。このデバイスはアプリを用いてデータを記録、分析することが可能です。また、米国の遠隔診療サービス大手のDoctor On Demandと提携していて、製品を購入するとDoctor On Demandの遠隔診療が1回無料で利用できます。このような革新的な取り組みは、心疾患や呼吸器疾患の患者を中心に今後もさらに広まっていくことが予想されます4。
前述のような聴診器の他にも呼吸器疾患に対応する医療デバイス、吸入器の遠隔化も進んでいます。ノバルティスファーマ株式会社は、自社のCOPD治療薬「ブリーズヘーラー」のIoT版をクアルコム社と提携することで開発中です5。また、睡眠時無呼吸症候群患者は自宅でCPAPと呼ばれる治療機器を継続的に使用する必要性が有り、CPAP販売企業大手のResMedは自社のCPAPからデータを記録・転送できるMyAirというアプリを2016年8月にリリースしました6。
継続的な管理が必要な疾患の一つに精神疾患も挙げられます。服薬アドヒアランスの向上は精神疾患の治療で重要で、大塚製薬の抗精神病薬「エビリファイ錠」と米国のProteus Digital Health社の「飲込み型センサーチップ」は連携し、患者の服薬パターンをモニタリングすることで、アドヒアランスの向上を図っています7。
患者が手軽に使えるスマホアプリであるDepression CBTは認知行動療法というカウンセリング方法を導入したAndroidアプリです。鬱病のような精神疾患のチェッカーやその疾患についての概要、また簡単なリラクゼーション機能を含んでいます8。
他にも、欧州の研究者たちが協同して行っているREMPARKというプロジェクトでは、パーキンソン病患者を対象に遠隔ウェラブル・モニタリング・ツールを装着してもらい、スマホと連携させます。患者の動作などの変化を感知することで、医師にその情報が伝えられ、必要に応じてイヤホンからの音声指示や、電気ショックを与えることができます。このプロジェクトは欧州最大規模の通信会社Telefonicaなども参加しており、欧州内での期待がとても高いことが伺えます9。
本稿では、前回に引き続き、遠隔医療をサポートする様々なデバイス・サービスをご紹介してきました。遠隔診療の分野に応用できるテクノロジーの進化はすさまじいスピードで、様々な企業がしのぎを削っているようです。残念ながら、まだ日本では導入されていないサービスも多いのが現状です。近い将来は日本でも、医療従事者と患者の双方が、安心して遠隔で医療サービスをうけられるよう、様々なサービスが普及していることでしょう。
1 : 9to5mac: ‘HealthPatch’ biosensor coming soon to consumer products shows what’s possible for Healthbook hardware
3 : the Guardian: Five of the best health monitoring devices
4 : Tech Crunch: CliniCloud’s Smart Stethoscope And Thermometer Let Doctors Check Your Vitals From The Cloud
5 : IoT News: ノバルティスのIoT吸入器、クアルコム社と提携
6 : mobihealth news: ResMed launches app for CPAP users to track sleep apnea treatment
7 : 日経デジタルヘルス: 薬×ICT、始まる
8 : Health Line: The Best Depression Apps of 2016
9 : Science 2.0: REMPARK: Wearable System Treats Parkinson’s Patients In Real Time