【オンライン診療×遺伝カウンセリング】導入医療機関事例・運用方法のご紹介

Editorial team MICIN

今回は、curonを2020年8月からご利用頂き、オンライン遺伝カウンセリングを行なって頂いている昭和大学横浜市北部病院の土肥 聡先生に、『こうすればうまくいく!オンライン診療を利用した遺伝カウンセリング』をテーマに、オンライン診療を実施する上での重要なポイント等をご講演頂きました。

 


 

土肥 聡先生 ご略歴

 

2004年に北里大学医学部を卒業後、東京都東大和市の東大和病院にて初期研修を修了。

その後、産科救急に対する現状を打破すべく、自らが産婦人科医となることを決め、

2007年金沢大学産婦人科に入局。

北陸地方で初めての産婦人科分野の超音波専門医となり、特に石川県の周産期医療に貢献。

2014年昭和大学医学部産婦人科学講座に入局。

2016年6月より東京女子医科大学付属遺伝子医療センターにて臨床遺伝学を修練、

2016年11月に臨床遺伝専門医を取得。

また2016年11月母体胎児専門医を取得し、幅広い周産期医療を中心に出生前検査、

ハイリスク妊娠分娩管理を中心に日々患者に提供している。

さらに、遺伝カウンセリングの遠隔医療発展のための研究に関与し、2020年4月から昭和大学横浜市北部病院・臨床遺伝ゲノム医療センターにおいて全人的医療を実施できる臨床遺伝専門医として遺伝カウンセリング外来を担当。

2020年8月より、昭和大学横浜市北部病院産婦人科及び臨床遺伝ゲノム医療センターにおいて、オンライン遺伝カウンセリングを開始。

 

 


■オンライン診療導入のきっかけ

 以前から、現状の遺伝カウンセリングは人材が少なく地域偏在が大きく、オンライン診療を活用することにより僻地医療へ貢献できるのではないかと考えていました。

 一方、昭和大学横浜市北部病院では出生前検査教室で毎週8組にスクーリング形式で情報提供を行っていましたが、昨年のCovid-19の流行により、3密の懸念が出てきました。

遺伝カウンセリングの定義に則すと、遺伝カウンセリングは適切な時期に行う必要があり、先延ばしをすることはできません。また、遺伝カウンセリングは対面でじっくり話を聞く必要があるため、妊婦との接触時間がどうしても長くなってしまいます。そこで、この状況下でも必要なタイミングでカウンセリングを行うこと、そして妊婦への感染リスクを避けることを考えオンライン診療の導入を検討しました。

 

■オンライン診療導入に重要な3つのこと

 1つめは、導入の動機付けです。今回はCovid-19が最大のきっかけとなりました。

 2つめは、導入における院内の協議体制の確立です。今回は前もって昭和大学の倫理委員会に相談し、まずは遺伝カウンセリングの研究として検討することになりました。その後研究計画を立てそれを病院執行部へ上申・承認され、導入することができました。

 3つめは、協力者の獲得です。通常の診療と同様で、医師と患者だけでは完結できないのでメディカルクラークとの連携が重要になってきます。

 

■アンケート項目

肯定的印象:

・コロナウィルスの感染対策の観点

否定的印象:

・直接話をしたいという要望

・オンラインが慣れていない

・対面の方が便利

・通信環境が整っていない事による不安

 

 

 

■患者獲得方法

 これまで、病院のホームページへの掲載、対面でのアプローチ、医療事務からのご案内などで患者を獲得してきました。その際に意識していることは、患者にオンライン診療のメリットとデメリットを明確に説明し、オンライン診療の抵抗感を無くすことです。例えば、オンライン診療の準備は意外と簡単と案内をし、LINEなどの擬似機能を持っているアプリに例えて紹介することで新しいツール導入のハードルを下げる事ができます。

 

■オンライン診療のメリット、デメリット、トラブル対処法

オンライン診療のメリットとしてお話していることは以下の三点です。

・受付が簡単である

・患者は診察時間にcuronに接続すれば診察が出来るので、診察待ち時間が減る

・支払いがクレジットカードのため、診療後すぐに会計処理が行われ、会計の待ち時間が短縮される

一方、デメリットとしては

・電波状況によって診療がスムーズに行えない場合がある

・画面越しのため、医師、患者側双方の熱量が伝えづらい事がある

の二点が挙げられます。

そして、主なトラブルは患者側による問題が多いですが通信環境が大半です。通信環境が厳しい場合は電話に切り替える、もしくは患者に謝罪して対面診療に切り替えています。また、病院側の機材トラブル回避のために、curonを使用するPCを複数用意しています。診察時の同席者の確認と診察内容の録画*を実施しています。

*curonのシステムには録画機能はございませんので、curon以外の方法で録画頂く必要がございます。

■土肥先生よりメッセージ

・苦労を惜しまず導入努力をする

・協力してくれる仲間を探す。

・誘い方を考察する

・トラブル回避のPlan Bを用意する

 


 

■ディスカッション

土肥先生のご講演の後、今回のセミナーにご参加頂いた先生方のうち、既にcuronをご利用頂いている2名の先生方、及びまだcuronを含めたオンライン診療を実施されていない2名の先生方、計4名の先生方にご参加頂き、ディスカッションを実施致しました。現状の活用方法や、問題点を他の先生方がどのように解決しているのかについてご意見を頂きました。

 

A先生 :

地域医療や移動できない人たちへの活用に可能性があるのではないかと思いました。課金になってしまうと難しいですが、多拠点接続の機能があれば良いのではないかと思います。

土肥先生:

スマホ1つで遠方でも、体調が悪い人でも気軽に診察に入れるのはオンライン診療の大きなメリットだと思います。一方で、第三者が入れないというデメリットがあります。私が行った例として、単身赴任のご主人が診療に入るのを希望された際、奥さんと私は対面診療で、ご主人がcuronを通じて診療を行いました。今後、3者通話が出来るようになれば診療の機会も広がるのではないかと思います。

B先生 :

遺伝性腫瘍で発端者を診断したときに、普段病院にかかってない人たち(血縁者のご家族など)にどのように受診勧告するかが大切になります。今までは、差し迫った場合には電話で受診勧告を行ってきましたが、curonなどのツールを使って受診勧告ができると血縁者の方も受診しやすいと思い導入しました。現在、がんと遺伝のオンライン相談という形で20件程度のオンライン診療を実施しています。遺伝カウンセリングは原則対面であるため、あくまでも受診勧告としてやっています。診療実施件数を増やすために、患者に熱意を伝えて受診してもらっています。遺伝性腫瘍疾患が数百人に一人という確率であり、潜在的に遺伝子腫瘍を持っている人がいるのではないかと考え、漠然と不安を抱えている人の受け皿になれたらと考えています。

土肥先生:

遺伝性腫瘍だとサーベイランスに使うのが便利ですというお声もあります。

B先生  :

結果開示の方のとりあえず結果だけ聞きたい方には、現状は電話がメインとなっています。電話だとコスト回収が出来ていないためオンライン診療に誘導するのもいいと思いました。

土肥先生:

オンライン診療だと画面共有の仕方を考えないといけませんが、私はWebカメラを使っています。患者も「あ〜なるほど」という反応があり電話とは違う意味があるものになると思います。

C先生  :

オンライン診療はがん研有明病院の中島先生にご紹介いただき、実施しています。クロンだと資料共有が出来ませんが、土肥先生がおっしゃっていたWebカメラを導入するのも一つの手だと思いました。今後、画面共有が使えるようになることを期待しています。

土肥先生:

今後、curonで画面共有出来るようになればいいですね。僕自身、画面共有をどうにかしたくwebカメラを導入しています。

D先生  :

オンライン診療はCovid-19の状況もあり、昨年沖縄の遺伝胃癌の方からお電話をいただき、遺伝カウンセリングを実施しました。島の院長先生と医療安全の先生に了解をいただき、DtoPwithD(主治医の援助)で実施しました。各病院に専用の部屋を作り、診療を行いましたが画面上のため、表情が伝わりづらい事がありました。そのような場合は、現場の医師が説明してくださりほとんど対面と同様に診療を実施できました。今後の課題として、診療のシチュエーションを選ぶ必要があり、どのような状況が対面向きか、オンライン向きか考える必要があります。

土肥先生:

curonはDtoPとして作られているが、DtoDでの使い方もあってもいいですよね。

B先生  :

curonのアプリ上で、DtoDで限られたリソースを補完しあう様な機能や画面共有が可能になる機能が開発される事に期待しています。


 

以上、Webセミナーのご報告でした。

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