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遠隔医療先進国アメリカの医療現場に見るICT技術の利活用

Editorial team MICIN
Editorial team MICIN

◼︎日本でのオンライン診療がスタート

2018年はまさに、”オンライン診療元年”とも言える年でした。オンライン診療に対し、厚生労働省はこれまで段階的に事実上の規制緩和を行ってきましたが、平成29年の「規制改革実施計画」の閣議決定(厚生労働省医政局通知)を経て、平成30年に診療報酬の改定や実施に際してのガイドラインの策定がなされました。

具体的には、診療報酬の改定により「オンライン診療料(70点)」や「オンライン医学管理料(100点)」が新設されたことで、報酬上の評価が明確化され、保険診療の一部に位置付けられました。また、ガイドラインとしての「オンライン診療の適切な実施に関する指針」では、遠隔医療の要件が明確化されています。日本でオンライン診療が普及するための土台が徐々に形成されつつあると言えます。

このような状況もあり、弊社のオンライン診療サービス「curon(クロン)」のような、医師と患者がつながるためのサービスの展開も活発化しています

 

遠隔診療の種類

以上で述べたようなオンライン診療は、「遠隔医療」の一種です。先述の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」では、「遠隔医療」を「情報通信機器を活用した健康増進、医療に関する行為」と定義し、次の二種類に分類しています(下図参照)1

 

医師-患者間(D to P):医師が情報通信機器を通じて患者と繋がり、診察や処方といった診療行為を実施する「オンライン診療」、医学的診断は行うものの受診すべき診療科の勧奨に留める「オンライン受診勧奨」といった行為を含みます。

医師-医師間(D to D):遠隔地の専門医が遠方から質の高い読影能力を提供する「遠隔画像診断」、遠隔地の病理医が病理診断を行う「遠隔病理診断」があります。

 図.  厚生労働省による「遠隔医療」の分類

 

上記の分類のうち、D to Dの遠隔診療は国内では少しずつ普及が進んできています。平成26年度の医療施設調査によると、遠隔画像診断に関しては、2014年時点で全国8,493ある病院の約16%(1,335)が導入しています2。これは前回調査時(平成23年)と比較すると116.9%の伸び率でした3。平成30年の診療報酬改定を経て、今後はD to D領域に限らずD to P領域でも普及が進んでいくと考えられます。

日本では本格的に始動したばかりの遠隔診療ですが、今回の記事では世界に先駆けて遠隔診療を展開させてきたアメリカの、実際の医療現場におけるICT技術の活用例をご紹介いたします。

(注:本記事は、2016年に書かれたこちらの記事の2018年版となります) 

 

◼︎遠隔医療先進国アメリカでのICT技術活用例

国土の広大なアメリカでは、医師にかかることが難しい地域の患者のために、早い段階から遠隔医療制度が整備されてきました。1993 年に設立されたアメリカ遠隔医療学会(ATA: American Telemedicine Association)によると、アメリカでは現在、遠隔医療を提供するネットワークが約 200ほど存在し、約3,500か所の施設を通して遠隔診療サービスが実施されています4

現在アメリカでは様々な種類の遠隔医療が実施されていますが、アメリカの国立衛生研究所(NIH:National Institutes of Health)は、遠隔医療を提供サービスの種類に応じて5種類に分類しています5。今回は、その5種類のサービスを「D to P」「D to D」領域に分け、それぞれのサービスの概要と、具体的な事例をご紹介します。

【D to P編】

遠隔医療患者モニタリング(RPM:Remote patient monitoring)

概要:自宅にいる患者に測定機器を身につけてもらい、その機器のセンサーの記録を取ることで、遠隔地の医師が継続したモニタリングを行います。慢性疾患の測定にこうしたモニタリング を組み込むことで患者の状態を把握することができ、生活の質を著しく改善することができます5

事例:Glooko社の糖尿病患者遠隔管理システム

画像出典:Glooko社ホームページより

 

Glooko社は、糖尿病患者の自己管理を助けるアプリケーション「Glooko」と、血糖計とスマートフォン等を接続し、血糖データをアプリ内に記録するためのハードウェアデバイス「Glooko MeterSync Blue」を提供しています。アプリに血糖データの他、普段の食生活や運動記録を残すことで医師に情報提供を行い、特定の条件下で高血糖・低血糖になる傾向のある患者に対し、前もって警告を行うことができます6

 

遠隔ホームケア(THC:Telehomecare)

概要:認知症や慢性疾患、転倒の恐れがある患者が自宅で生活を続けるにあたり、緊急事態に迅速に対応することを目的としています。これにより、患者の症状の悪化を素早く認識することができます5

事例:マーシー・ヘルスシステム(Mercy health system)の遠隔ホームケア

画像出典:CNN BUSINESS: The $54 million hospital without any bedsより 

 

ミズーリ州やカンザス州など4州で30以上の病院を運営するマーシー・ヘルスシステムは、慢性疾患患者を対象に遠隔ホームケアを試験的に導入しています。例えば、病院から離れた場所に暮らし、軽度の脳卒中経験もある心臓病患者にiPadを貸し出し、医療スタッフによるホーム診療を週に2回実施しています。スタッフは体調や薬の服用状況を尋ね、患者の家族に血圧を測るように指示したりします7。マーシー・ヘルスシステムは、このプログラムを開始してから、患者の救急室利用率や入院率は33%以上減少したとしています8

 

ポイント・オブ・ケア(point-of-care)

概要:外来患者向けの診察室や患者のベッドサイドなど、患者の生活場所のそばで行われる全ての検査の総称です。通常の病院の検査室での検査と対置され、簡易検査機や迅速診断機器を使用することで、検査時間が短縮され、患者のQOLの向上に繋がります5

事例:Abaxis社の生化学分析装置『piccolo Xpress』

Abaxis社が提供している生化学分析装置『piccolo Xpress』は、わずか0.1mlの検体(血液)を入れたマルチローターを機器に挿入するだけで、約12分でCRP(C反応性蛋白)、LDH(乳酸脱水素酵素)、電解質をはじめ全30種類の項目のうち、最大14項目を同時に測定し、検査結果をプリントアウトしてくれます9

画像出典:株式会社セントラル科学貿易ホームページ

「製品情報:生化学分析装置 ピッコロエクスプレス」より

 

【D to D編】

テレコンサルテーション(Teleconsultations)

概要:医師や医療スタッフが、特殊な症状のある患者について遠方の専門医にアドバイスを求める際に用いられます。放射線科医のいない医療機関が遠方の放射線科医に画像情報を送信し、MRI等の読影を依頼するなど、医療情報の共有も行われます5

事例:Teleradiology solutions社の読影サービス

画像出典:Teleradiology solutions社 パンフレットより10

 

Teleradiology solutions社は、人材不足による放射線科医の負担を軽減するために、世界4ヶ国の10の拠点で24時間365日リアルタイムでの読影サービスを提供しています。診断結果は、迅速で正確かつ詳細なレポートで配信されます11

 

手術モニタリング(IOM:Intraoperativemonitoring)

概要:複雑な外科手術中のデータや画像情報を元にして実施される、遠方の専門家によるモニタリング。安全で確実な手術を目指す。例えば神経外科において、術中の患者の変化を素早く検知し、脳や末梢神経の機能にかかるダメージを最小限のものにする5

事例:American intraoperative monitoring社の術中神経モニタリング(IONM)サービス

画像出典:American intraoperative monitoring社より

 

American intraoperative monitoring社は、170名以上の神経監視技術者らを中心とした専門スタッフによる術中神経モニタリング(IONM)サービスを提供しています。このモニタリングは、脳や脊髄などの中枢神経系の保護を必要とする手術分野で実施され、患者の状態を素早く把握・中継し、場合によっては外科医に対して手術手法の改善も促します。患者の変化への反応時間を短縮することで、神経損傷のリスクを軽減します12

 

◼︎アメリカの医療現場でのICT技術の活用現状と展望

 以上見てきたように、医療とICT技術の融合が進むアメリカでは、患者のQOL向上や医療技術の質の追求に遠隔医療が大きな役割を果たしています。アメリカと日本では国土面積も保険制度も異なることから、アメリカで成功した事例をそのまま日本の現場に適用することは難しいでしょう。しかし、アメリカが遠隔医療によってアプローチしようとしている高齢化や医療人材の不足といった課題は、日本にとっても大きな課題です。遠隔医療の利点を鑑み、どのようなツールとして活用していくのかを考えたときに、アメリカの事例から参考にできる部分も多いのではないのでしょうか。

 

 

1厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(令和元年7月改訂)
2厚生労働省 平成26年医療施設(静態・動態)調査(上巻)「病院数,遠隔医療システム・一般病院(再掲)・開設者別」
3厚生労働省 平成23年医療施設(静態・動態)調査(上巻)「病院数(重複計上),遠隔医療システム・一般病院(再掲)・開設者別
4 : アメリカ遠隔医療学会(ATA: American Telemedicine Association)ホームページ
5 : 厚生労働省 平成30年2月実施「第1回情報通信機器を用いた診療に関するガイドライン作成検討会」資料「米国における遠隔医療に関する調査」
6Glooko社ホームページ, サービス利用パンフレット「glooko GETTING STARTED iOS」  
7JETRO ニューヨークだより(2017年5月) 八山幸司「米国の病院におけるIoTの活用状況」
8CNN BUSINESS: The $54 million hospital without any beds
9株式会社セントラル科学貿易ホームページ「製品情報:生化学分析装置 ピッコロエクスプレス」
10 : Teleradiology solutions社 パンフレット
11 : Teleradiology solutions社ホームページ:Nighthawk Teleradiology
12 : American intraoperative monitoring社ホームページ