子供の舌下免疫療法|メリット・デメリット・治療費なども解説

  • 【読み】 ぜっかめんえきりょうほう
  • 【呼称】 -

スギ花粉症やダニアレルギー性鼻炎の治療法として今、注目を集めているのが舌下免疫療法です。痛みなどを伴わない画期的な治療方法で、小さなお子さんも利用できる点が特徴です。

今回は舌下免疫療法を子どもが使うことのメリット・デメリットや、治療にかかる費用などを記事にまとめました。ご参考にしてみてください。

アレルギー治療に効果のある舌下免疫療法

舌下免疫療法とは、アレルゲン免疫療法のひとつで、体質を根本的に改善することでアレルギーによるさまざまな症状を抑えていくという治療法です。現在は、スギ花粉症またはダニアレルギー性鼻炎の確定診断が出ている患者さんに対して使用することができます。

舌下免疫療法は、アレルゲンをごく微量含んだ内服薬(「シダキュア」や「ミティキュア」など)を舌の下に置いて1分程度そのままにしたあと飲み込むという方法で、服用は1日1回。3~5年ほどの長期的な治療を行います。

 

舌下免疫療法の効果

これまでのアレルギー治療が発現した症状を緩和させるといった対象療法のやり方であったのに対し、舌下免疫療法はアレルギー体質そのものを軽減していく効果があります。

薬にはアレルギーを引き起こす原因となる物質(アレルゲン)が入っていますが、長期間にわたって服薬する中で、徐々にアレルゲンの配合量を増やしていきます。アレルゲンに体を慣らしていき、免疫の過剰反応であるアレルギー症状が発症しないように抑え込むというものです。

舌下免疫療法の治療は3~5年ほどの長期間となりますが、早ければ数カ月でアレルギー症状の軽減を実感できる方もいます。くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみ、のどの違和感といった直接の症状のほか、これらによる集中力の低下やよく眠れないとったQOL(生活の質)に影響する問題も改善していく効果が期待できます。

なお、舌下免疫療法は治療者の約80%が効果を実感しており、すべての患者さんに適しているわけではありません。また、副作用が起こるケースもあります。

 

何歳から利用できる?

舌下免疫療法はお子さんの花粉症・ダニアレルギー性鼻炎の治療にも使用できます。「ミティキュア」(ダニに対する治療薬)は2018年2月、「シダキュア」(スギ花粉に対する治療薬)は2018年6月から子どもの使用も承認されました。

現在は5歳のお子さんから舌下免疫療法の使用が可能になりました。

 

 

子供の舌下免疫療法のメリット

子どもが舌下免疫療法を使用することのメリットをご説明します。

アレルギー体質を根本から改善できる

舌下免疫療法のターゲットは、ステロイド剤や抗アレルギー薬と同じように個々のアレルギー症状を狙うものではなく、アレルギー反応を引き起こす体質そのものです。

ステロイド剤や抗アレルギー薬は使用をやめると症状が再び引き起こされます。しかし、舌下免疫療法は根本的な体質改善を行えるため、一定期間治療を継続した後は、薬の服用を中止してからもアレルギー症状の発症を抑える、あるいは症状を軽減することができます。

お子さんが小さいうちに舌下免疫療法による治療を開始すれば、早めに完治に近い状態にまで改善することができるので、その後長きにわたってアレルギーに悩まされる心配を減らすことができます。

 

治療のたびに通院する必要がない

これまでもアレルゲン免疫療法はありましたが、皮下注射のため、患者さんは治療のたびに病院・クリニックに通院しなければいけませんでした。

一方、1日1回1錠の薬を服薬する舌下免疫療法は、基本的に自宅で治療を行うことができます。初回のみ病院・クリニックで医師の監督下で行う必要がありますが、これは、万が一服薬による副作用などが起こった場合に即座に処置できるといった目的のためです。

学業や部活動、習い事などで忙しいお子さんにとっては通院の時間も負担になることがあるでしょう。舌下免疫療法なら、自宅にいながら短時間で手軽に服薬することができます。

 

痛みがない

前述した通り、これまでのアレルゲン免疫療法は皮下注射でした。小さなお子さんは注射が苦手なことが多く、泣いてしまったり嫌がったりする姿を見るのがつらいという親御さんは非常に多くいらっしゃいました。

舌下免疫療法はタブレットタイプの飲み薬で、錠剤も口の中で溶けやすいため、痛みなどを一切伴いません。小さなお子さんでも服薬しやすいというメリットがあります。

 

子供の舌下免疫療法のデメリット

次に、舌下免疫療法を子どもが行うことのデメリットも見てみましょう。

 

前後2時間は激しい運動・入浴が禁止

舌下免疫療法の薬の注意点として、「服薬の前後2時間ほどは激しい運動・入浴が禁止となっている(成人の場合は飲酒も禁止)」ことがあります。

薬は、一般的には朝または夜寝る前に服用する患者さんが多いです。お子さんの場合、学校で運動部の部活動の朝練習があったり、1時間目が体育だったりすることがあったりと、朝の服薬が難しいケースがあります。また、夜お風呂に入りたいのに、薬を服用したからしばらく入浴できない……ということもあります。

薬の服用として推奨されている時間帯は特にないので、お子さんにとって都合の良い時間に服薬するといいでしょう。

 

毎日の服薬を長期にわたって行う必要がある

舌下免疫療法は毎日服薬する必要があります。1日1回だけですが、数年ほど継続する必要があり、また途中で服薬を中断してしまうとせっかくの治療がリセットされてしまいます。特に小さなお子さんの場合は、毎日の服薬が難しいということもあるでしょう。

 

副作用が起こる可能性がある

舌下免疫療法は副作用を引き起こすことがあります。

軽度の副作用では、
・口の中や唇のかゆみ、舌のむくみ
・じんましん
・嘔吐や腹痛、下痢
・耳のかゆみ
・のどの違和感
などが起こることがあります。

また、きわめてまれですが、重大の副作用として
・アナフィラキシーショック
・喘息発作
・意識障害
などが起こる可能性があります。こうした副作用の症状が見られた場合は、直ちに医療機関を受診してください。

 

子供の舌下免疫療法の費用は?

舌下免疫療法は保険診療となりますので、「こども医療費助成制度」が適用されます。そのため、自治体によって助成制度の内容は異なりますが、健康保険に加入している0歳から中学3年生までは実質的な負担なし(無料)または数百円などの自己負担となります。「こども医療費助成受給者証」が必要となりますので、あらかじめ交付申請を行ってください。

「こども医療費助成制度」の詳細については、お住まいの自治体に問い合わせてください。

 

まとめ

体質を根本的に改善することで、花粉症などのアレルギー症状を長期にわたって改善、または完治に近い状態まで治すことができる舌下免疫療法。小さなお子さんも使うことができる治療法なので、ぜひ検討してみたいという親御さんは、医療機関にご相談してみてください。

なお、舌下免疫療法にもメリット・デメリットや、思うように効果が出ないケース、副作用が起こるケースなどがありますので、医師からの説明を受けてよく納得してから治療を開始することをおすすめします。

 

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【執筆者】


医師:木村眞樹子
都内大学病院で循環器内科および内科として在勤中。 内科・循環器科での診察、治療に取り組む一方、産業医として企業の健康経営にも携わっている。

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