舌下免疫療法は効果ないって本当?持続期間・副作用や体験談まとめ
- 【読み】 ぜっかめんえきりょうほう
- 【呼称】 -
※2026年 8月時点の情報を元に作成しています。
アレルギー性鼻炎の治療法にはいくつか種類があります。そのひとつが「舌下免疫療法」と言い、近年この治療法を選択する患者さんが増えてきています。アレルゲンに体を慣らしていくことで、アレルギー性鼻炎の症状の軽減を目指せるといった特徴があります。
それでは、舌下免疫療法は他の治療法とはどのような違いがあるのでしょうか?メリット・デメリットにはどのようなものがあるのでしょうか?本記事では、舌下免疫療法の効果や副作用、よくある疑問などをまとめてご紹介します。また、アレルギー性鼻炎の発症のメカニズムもご説明しますので、お悩みの方はぜひ最後までお読みください。
舌下免疫療法とは
まずは舌下免疫療法とは何かを解説します。
アレルゲン免疫療法のひとつ
アレルギー性鼻炎とは、アレルギーを引き起こす原因物質(アレルゲン)が体内に侵入した際に鼻などの粘膜を刺激し、異物を排除するための働きが過剰になって、鼻水や鼻づまり、くしゃみといった鼻炎症状が続く状態のことを言います。
アレルギー性鼻炎の治療法には、アレルゲンと日常的に可能な限り接触しないことをはじめ、薬物療法、手術療法、アレルゲン免疫療法などがあります。このアレルゲン免疫療法のひとつに「舌下免疫療法」が含まれます。
舌下免疫療法が注目される理由
舌下免疫療法は、スギ花粉やダニなどによるアレルギー性鼻炎の症状を長期にわたって寛解させることができる可能性がある治療法のひとつと考えられています。
点鼻薬や内服薬などを用いる薬物療法は対症療法であり、あくまで症状を抑え込む治療法です。それに対して舌下免疫療法は、アレルゲンに対する体の反応を徐々に変化させていくことで、アレルギー疾患の自然経過の改善が期待できる治療法とされています。ただし効果には個人差があり、すべての方に同じ効果が得られるとは限りません。
アレルギー性鼻炎について
なぜアレルギー性鼻炎に舌下免疫療法が効果的なのかの説明に入る前に、まずアレルギー性鼻炎への理解を深めてみましょう。
アレルギー性鼻炎のタイプ
アレルギー性鼻炎には、花粉の季節にだけ症状が見られる「季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)」と、1年を通じて発症がある「通年性アレルギー性鼻炎」があります。
季節性アレルギー性鼻炎を引き起こす花粉は、スギ・ヒノキ・ブタクサ・シラカンバ・イネ・ヨモギなどがあり、ほぼ一年中何かの花粉が飛んでいます。春先のスギ花粉による花粉症がよく知られており、鼻炎症状が出るのが春ではないと「これは花粉症じゃない」と考える方もいらっしゃいますが、実は花粉症だったというケースが少なくありません。
通年性アレルギー性鼻炎は、ダニやハウスダスト、犬や猫の毛が原因になりやすいです。
主な症状の内容
くしゃみ、鼻づまり、さらさらした透明の鼻水などが主な症状です。
連続で何回もくしゃみが出る、鼻を頻繁にかむことで肌が荒れたり血が出たりする、目がかゆくなって腫れる、涙が止まらない、頭がボーっとして集中力が落ちて仕事や学業に差しさわりが出る、といった二次的な影響もあります。
どのように発症するか
アレルギー性鼻炎は、スギ花粉やハウスダストなどのアレルゲンが鼻の粘膜に付着すると、異物が侵入したと判断した体が抗体をつくり、マスト細胞と結合します。
次に同じアレルゲンが体内に入ると、肥満細胞からアレルギー誘発物質(ヒスタミンなど)が放出。これらの化学伝達物質が鼻の神経や血管を刺激してくしゃみや鼻水を引き起こし、鼻づまりを生じると考えられています。
舌下免疫療法による治療方法
それでは、舌下免疫療法について、効果を起こす仕組みや治療の流れなどを詳しく見ていきましょう。現在、スギ花粉症およびダニアレルギー性鼻炎に対する治療として行われています。
舌下免疫療法が効く仕組み
舌下免疫療法では、アレルゲンを少量ずつ摂取することで体を慣らし、過剰な免疫反応を起こさないようにする、あるいは和らげるという治療法です。
アレルゲン免疫療法の効果発現メカニズムはまだ十分に解明されていません。現在は、普段の生活で自然に触れる量よりも多くのアレルゲンを体内に取り込むことにより、過剰な免疫反応を抑える制御性T細胞が活性化し、アレルギー反応を促進するTh2細胞を抑制します。また、アレルギー反応を抑えるTh1細胞と、抗原特異的IgGとIgAが増加することで、アレルギー反応が抑えられるようになると推測されています。
期待できる効果
舌下免疫療法を含むアレルゲン免疫療法は、日本アレルギー学会「アレルゲン免疫療法の手引き2025」において、8割前後の患者さんで有効性が認められるとされています*1。くしゃみや鼻水、鼻づまりといった症状の軽減や寛解が期待できますが、効果の程度には個人差があります。
*1 出典:日本アレルギー学会「アレルゲン免疫療法の手引き2025」
治療は長期にわたって継続する必要がありますが、症状を抑えてくれることで、アレルギー治療薬を減量できたり、生活の質(クォリティ・オブ・ライフ)を改善してくれたりといったメリットもあります。
治療の流れ
まず問診と血液検査・皮膚テストで、患者さんのアレルゲンを特定します。舌下免疫療法の具体的なやり方は、治療薬を舌の下に置いて、1~2分そのまま保持した後に飲み込みます(1日1回の舌下面投与)。その後、約5分間は飲食およびうがいは避け、投与前後2時間ほどは入浴・飲酒・激しい運動を行わないようにします。
初回は医師の監視下で投与しますが、翌日からは患者さん本人が自宅で服薬できます。なお、舌下免疫療法は保険適用の治療法です。
舌下免疫療法は効果ない?続けられる?
続いて、気になる治療期間や効果の持続期間について解説します。
Q. 服用期間はどのくらい?
A. 最低でも2年間、一般的には3~5年は継続する必要があり、長期にわたった治療になります。また、最初の1年間は半月に一度の通院、2年目からは1カ月ごとに通院する必要があります。
Q. 効果はいつからいつまで続く?
A. 服用開始から1年ほどでも効果を実感できる方が多い一方、治療は3~5年の継続が推奨されています*1。ただし、舌下免疫療法は完治を保証する治療ではなく、効果の現れ方や持続期間には個人差があります。治療終了後も、時間の経過とともに効果が弱まる場合があるため、症状の変化を医師に相談しながら経過を観察することが大切です。
*1 出典:WHO position paper 1998(各製剤添付文書引用)、鼻アレルギー診療ガイドライン2024年版(改訂第10版)準拠
舌下免疫療法に関するよくある質問
Q. 効果が出にくいケースはありますか?
A. 効果の現れ方には個人差があり、すべての方に同程度の効果が得られるわけではありません。スギ花粉症では初回の花粉飛散期終了時点で、ダニアレルギー性鼻炎では1年以上投与しても効果が実感できない場合、それ以降の継続について医師が慎重に判断します。
Q. 治療を途中でやめるとどうなりますか?
A. 自己判断で服用を中止せず、必ず医師に相談してください。症状が改善していても急に中止すると症状が再発することがあるため、中止の判断は経過を見ながら慎重に行う必要があります。長期間中断した後に再開する場合も、自己判断ではなく医師の監督のもと、初回投与量から再開することが推奨されています。
Q. 治療を始める前に確認しておくべきことは?
A. スギ花粉症・ダニアレルギー性鼻炎の確定診断(皮膚反応テストまたは特異的IgE抗体検査)が必要です。また、禁忌・慎重判断の対象に該当しないか、現在服用中の薬(非選択的β遮断薬など)や持病の有無について、事前に医師へ申告してください。
舌下免疫療法の副作用は?
最後に、舌下免疫療法の安全性について確認しましょう。副作用はあるのでしょうか?
副作用1:咳やかゆみ
舌下免疫療法の副作用としては、咳や喉の不快感、口腔内のかゆみや腫れ、唇の腫れといったものがあります。
副作用2:アナフィラキシー
重大な副作用としては、アナフィラキシー(医薬品などに対する急性の過剰反応で、皮膚症状や消化器症状、呼吸器症状、意識障害などが起こる)の可能性があります。
副作用が起こる確率
口腔内の腫れやかゆみなどの軽度な副作用は、服用開始初期(およそ1カ月)を中心に一定の割合で起こるとされています*1。アナフィラキシーなどの重大な副作用は、添付文書上「頻度不明」とされていますが、発現する可能性はゼロではありません。
*1 出典:シダキュア/ミティキュア/アシテア各添付文書「11.副作用」、鼻アレルギー診療ガイドライン2024年版(改訂第10版)準拠
アナフィラキシーが起きたら
服用後に、じんましん、口や喉の腫れ、息苦しさ、めまい、意識がぼんやりするなどアナフィラキシーを疑う症状が現れた場合は、自己判断で様子をみず、直ちに医療機関を受診するか、救急要請(119番)をしてください。特に服用後30分間、投与開始初期(およそ1カ月)、スギ花粉飛散期は症状が起こりやすいとされているため、注意が必要です。
舌下免疫療法を受けられない人・慎重に判断される人
原則として、過去に該当治療薬(シダキュア・ミティキュア・アシテア)でショックを起こしたことのある人、重症の気管支喘息の人は舌下免疫療法を受けられません(禁忌)。
一方、次に該当する場合は、一律に受けられないわけではなく、医師が個々の状態を踏まえて可否を慎重に判断します。
・気管支喘息(重症以外)
・悪性腫瘍、自己免疫疾患、免疫複合体疾患、免疫不全症など
・抜歯後など口腔内の術後、口腔内に傷や炎症がある
・全身性ステロイド薬を使用中
・非選択的β遮断薬を使用中(アレルギー反応の増強、アナフィラキシー時のアドレナリンの効果減弱のおそれ)
・三環系抗うつ薬・モノアミン酸化酵素阻害薬(MAOI)を使用中
・重症の心疾患、肺疾患、高血圧症がある
・妊娠中・授乳中
・5歳未満
・65歳以上の高齢者
高血圧の方は一律に受けられないわけではなく、上記のとおり慎重判断の対象です。持病やお薬を服用中の方は、治療開始前に必ず医師・薬剤師に申告してください。
まとめ
舌下免疫療法は、体質そのものの改善を目指す治療法で、スギ花粉症やダニアレルギー性鼻炎の症状の軽減が期待できます。ただし、効果には個人差があり、すべての方に同じ効果が得られるとは限りません。また、アナフィラキシーなどの副作用が起こる可能性があるため、医師の管理のもとで慎重に治療を進める必要があります。5歳以上の方が対象となる保険適用の治療法です。
舌下免疫療法のメリット・デメリットや費用、治療対象となる薬剤の違いについて詳しく知りたい方は、舌下免疫療法のメリット・デメリットは?効果や副作用についてまとめもあわせてご覧ください。
ただし治療は長期にわたります。また、治療法は、病気の重症度やタイプ、そして患者さん自身のライフスタイルなどを考慮に入れて選ぶことになります。ご自分はもちろん家族の症状が気になるという方も、ぜひ一度、舌下免疫療法について医師に相談してみてください。
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この記事の監修者
大津和弥
【経歴】
・1999年3月 三重大学医学部卒業
・1999年5月〜 三重大学附属病院で研修
・2000年〜 市立四日市病院勤務
・2006年〜 三重大学附属病院勤務(2007年1月〜4月 国立がんセンター東病院研修)
・2012年〜 三重大学附属病院 耳鼻咽喉・頭頸部外科 講師(専門は頭頸部癌)
・2014年4月〜 小松病院で一色信彦、田邊正博の音声外科医師の指導の下、音声外科手術を研鑽
・2021年10月〜 市立ひらかた病院 耳鼻咽喉科部長
・2022年〜 市立ひらかた病院 耳鼻咽喉科主任部長、音声外科センター長
・2024年4月〜 大津耳鼻咽喉科・ボイスクリニック 院長(市立ひらかた病院 耳鼻咽喉・頭頸部外科 音声外科センター長 併任)
・大阪医科薬科大学 臨床教授
【所属学会・資格】
・喉頭形成手術実施医認定
・日本耳鼻咽喉・頭頸部外科学会 補聴器相談医
・日本耳鼻咽喉・頭頸部外科学会 専門研修指導医
・難病指定医
・補聴器適合判定医
【所属】
・大津耳鼻咽喉科・ボイスクリニック 理事長
・市立ひらかた病院 耳鼻咽喉・頭頸部外科 音声外科 センター長
【専門領域】
・音声外科
・頭頸部外科
参考文献
・日本アレルギー学会「アレルゲン免疫療法の手引き2025」
・鼻アレルギー診療ガイドライン2024年版(改訂第10版)(日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会編、金原出版、2024年3月31日発行)
・シダキュアスギ花粉舌下錠 添付文書(鳥居薬品株式会社、2023年7月改訂)
・ミティキュアダニ舌下錠 添付文書(鳥居薬品株式会社、2023年7月改訂)
・アシテアダニ舌下錠 添付文書(塩野義製薬株式会社、最新版)
・日本アレルギー学会「アナフィラキシーガイドライン2022」
・厚生労働省「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第5版)」(2025年3月)
このページは、オンライン診療サービス curon(クロン)を開発・運営する株式会社MICINにより運営されています。クロンは厚生労働省・経済産業省・総務省のガイドラインにも準拠した、初期費用・月額固定費用が無料で運営できるオンライン診療のシステムで、全国で多数のクリニックに導入されています。サービスの詳しい内容について、こちらをご覧ください。
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