スイッチOTC医薬品とは
- 【読み】 すいっちおーてぃーしーいやくひん
- 【呼称】 -
※この情報は2021年2月時点での情報です。制度などの情報については必ず公式発信情報をご確認ください。
【概要】
「スイッチOTC」とは、いままでは原則、医師に処方された場合のみ使用することのできる医療用医薬品の中でも、長い間にたくさんの人に使われていて、比較的副作用が少なく安全性の高い成分を、OTC医薬品としても販売できるように規制緩和された医薬品のことを指します。最近、スイッチOTCが増加傾向にあります。本記事では、スイッチOTC医薬品の役割や活用方法、その他注意点について解説します。
役割
・国民のセルフメディケーション実施における選択の幅を広げるために活用する事ができます。
・国民に、より効果を発揮する医薬品を提供することができます。
これまで一般のOTC医薬品は、効果よりも安全性が重視されていましたが、スイッチOTC薬が登場したことで、より効果の高い薬が購入できるようになりました。その他にも、禁煙補助剤などもスイッチOTCとして発売され、OTC医薬品は軽い症状を改善するだけではなく、病気の予防や生活の質の向上など、セルフメディケーションの中でより幅広い役目を果たすことが期待されるようになりました。さらに今後は、尿失禁、頻尿、不眠症、骨粗鬆症の発症の予防に使用する医薬品などもスイッチOTC化することが検討されています。
(スイッチOTCの役割の一例)
① 生活習慣病(注1)等の疾病に伴う症状発現の予防:
-検査で軽度の血清高コレステロール、高血圧、高血糖が発見され、そのままにしておくと、将来、高コレステロール血症、高血圧症、糖尿病等の生活習慣病の発症が予測される場合の使用(注2)
-花粉、ハウスダスト(室内塵)などによるくしゃみ・鼻水・鼻づまり・頭重等のアレルギー症状の発現の予防 等
② 生活の質の改善・向上
-発毛、禁煙補助、不眠、軽い尿もれ、肥満 等
③ 健康状態の自己検査
-侵襲がない又は少ない測定項目 等
④ 軽度な疾病に伴う症状の改善(一般用医薬品として承認前例のないもの)
-創傷面の化膿の防止・改善、膣カンジダ(膣のかゆみ、おりもの)の改善、口唇ヘルペスの改善〈いずれも外用薬〉 等
(注1)生活習慣病については運動療法及び食事療法が基本となる。
(注2)効能・効果の具体的な表現については別途検討する必要がある。
使用時の注意点
スイッチOTC薬は今まで医療用として使われていた医薬品なので、正しく使用しないと副作用などの健康被害が起こる恐れも高くなりますます。他の薬との飲み合わせが悪かったり、使用禁忌の症状などもあるため、用法・用量を守って正しく使用するように購入者に説明しましょう。
医学的知識のない者による医薬品の自己使用は病状の悪化をもたらすこともあるので、使用は原則短期間に留め、重症の際や服用しても症状がよくならない場合は、直ちに医療機関を受診するよう
促します。
開発時の留意点
スイッチ成分の選択の要件
・ 医療用としての使用実績があり、再審査又は再評価が終了しており、副作用の発生状況、海外での使用状況、再審査又は再評価結果等からみて一般用医薬品として適切であること
・ 医師の指導監督なしで使用しても、重篤な状態になるおそれのないもの(初回医師の診断を受けた後の再使用
を含む)
・ 習慣性、依存性、耽溺性がないこと
・ 麻薬、覚せい剤、覚せい剤原料、毒薬、劇薬でないこと
・ 薬物相互作用により重篤な副作用が発生しないこと(「使用上の注意」で対応できる範囲)
・ 国民の選択の幅の拡大が期待できるもの
スイッチ成分の処方(単味剤か配合剤か)
医療の現場においても他の成分と組合わせて使用されることの多い成分については、一般用医薬品の特性である複数成分配合による便宜性・合理性も考慮に入れるべきである。
(例)
・去痰成分、去痰目的に使用される酵素成分
→効果の確実性を期待して気管支拡張成分や鎮咳成
分と配合して鎮咳去痰薬に
・ 胃粘膜保護成分
→制酸剤と配合して胃腸薬に
スイッチ成分の配合量
医療用医薬品の使用量を超えない範囲であって、一般用医薬品としての有効性・安全性が認められる配合量とする。
用法・用量
・使用者が誤解無く理解できる表現であること
・誰でも間違うことなく使用できる用法であること
・服用時期が明示されていること
・長期連用を推奨するものでないこと
効能・効果
医療用医薬品の適応症の範囲で、使用者が理解しやすい症状表現に置き換えることを原則とする。
使用上の注意
副作用発生等に関する注意喚起及びその対処について、使用者に理解しやすい表現で記載する。
販売名称
薬局店頭あるいは家庭内で医療用医薬品との混同・誤用による危険を避ける必要がある。この観点から、販売名称は医療用医薬品と明確に区別できる必要がある。
包装
薬剤の性質によっては、1回用量毎の個別包装も考慮する。
市販後の留意点
すべての医薬品に共通する事項であるが、スイッチ OTC 薬については指定薬とされるところから、以下の点に十分配慮する必要がある。
情報提供
・ 医薬品企業は薬局・薬店に対し、きめ細かに情報伝達を行う。
・ 医薬品企業は販売方法、広告宣伝方法に留意する。
・ 薬剤師は販売に当り、購入者に適切なアドバイスを与え、理解できるよう情報を伝える。
市販後調査
・ 市販後一定期間(原則として 3 年間)、副作用等に関する市販後調査を調査計画書に従い実施する。品目によっては、市販後 1 年の時点で一旦調査結果をまとめ、厚生労働省に報告する。
・ 調査結果に基づいて使用上の注意を変更するなど、適正使用の確保に努める。
引用:スイッチOTC薬の考え方
セルフメディケーション税制との関わり
きちんと健康管理を行っている人が平成29年1月1日以降にスイッチOTC成分を含むOTC医薬品を購入した際に、その購入費用について所得控除を受けることができるようにしたものです。
特定の成分を含むOTC医薬品を1年間に12,000円以上購入し、更にその年に会社の健康診断や自治体のメタボ検診などを受けている人が対象となります。
病院やクリニックにかかるほどでもない軽い症状の時に効果の高いOTC医薬品を利用することで、自分自身で健康管理(セルフケア)を行うことを国として推進しています。
また、特定の成分とは、医師でもOTC医薬品でも使用できる成分(スイッチOTC医薬品)のことです。
【参考文献】
セルフメディケーション税制とは?|くすりと健康の情報局
スイッチOTC薬の考え方
スイッチOTC医薬品の候補となる成分の要望募集で提出された要望について
【監修薬剤師】
薬剤師:大西真理
ドラッグストア併設調剤薬局の薬剤師。薬局長として薬局全体の管理、教育等に従事し、管理薬剤師としても活躍。広域病院から地域密着型クリニックまで幅広い内容の処方箋応需経験を持つ。
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