公開日:2024年03月29日

ゾフルーザは効かないって本当?耐性ウイルスについて詳しく解説

  • 【読み】 ぞふるーざ
  • 【呼称】 -

※2026年9月時点の情報を元に作成しています。
ゾフルーザは、塩野義製薬によって開発された新しい作用機序を持つインフルエンザ治療薬です。錠剤を1回服用するだけで治療が完結する利便性の高い薬として知られる一方、薬が効かない「耐性ウイルス」が一時期話題になったため「ゾフルーザは効かない」という噂も広まっています。

ただし、「ゾフルーザが効かない」という噂は正確ではありません。ゾフルーザは現在もインフルエンザ治療薬のひとつとして用いられています。医師の指示に基づいて適正に使用する場合、耐性ウイルスについて過度に心配する必要はないとされています。

正しい知識を身につけ、辛いインフルエンザ症状の軽減に役立てていきましょう。

ゾフルーザ(成分名:バロキサビル マルボキシル)とは

 

対象となる病気・症状

ゾフルーザは、インフルエンザウイルスの増殖に必要な「キャップ依存性エンドヌクレアーゼ」という酵素の働きを阻害することで、ウイルスの増殖を抑えます。従来から使用されてきたオセルタミビル(タミフル)などのノイラミニダーゼ阻害薬とは異なる作用機序を持つ抗インフルエンザ薬です。また、感染者との接触など感染の可能性が生じた際に投与することで、A型・B型インフルエンザウイルス感染症の発症を予防します。

 

ゾフルーザで期待できる効能・効果

インフルエンザを発症すると、咳、喉の痛み、頭痛、鼻づまり、熱っぽさや寒気、筋肉や関節の痛み、疲労感といった症状があらわれます。ゾフルーザは、一般的な患者から重症化リスクのある患者まで、インフルエンザの症状をプラセボより約1日(26.5〜29.1時間)早く治す特徴があります。

また、臨床試験の結果、インフルエンザの発症から48時間以内に、その同居人や共同生活者にゾフルーザを投与したとき、その後インフルエンザ陽性となった同居人や共同生活者の割合は投与しなかった場合と比べて低く、予防効果が確認されています。

 

ゾフルーザが効かないとされる理由

耐性ウイルスが高い割合で検出されたことがある

ゾフルーザは、2018年2月に製造販売承認を取得し、同年3月に販売が開始されました。販売開始後初めて本格的に使用された2018~2019年にかけてのインフルエンザ流行シーズンでは、1回だけの服用で治療が完結する利便性が好まれ、市場シェアは約4割を占める大ヒットとなりました。

一方、ゾフルーザの使用後には、薬剤への感受性※が低下したインフルエンザウイルスが出現することが報告されました。日本の全国サーベイランスでは、2018~2019年シーズンに調査された900株のうち41株(4.6%)でバロキサビルへの感受性低下が確認されました。特にA(H3N2)では356株中33株(9.3%)と、他の型より高い割合でした。

※なお、一般には「耐性ウイルス」と呼ばれることがありますが、バロキサビルの場合は、薬剤の効果が完全になくなるとは限らないため、「低感受性ウイルス」または「感受性低下ウイルス」と表現されることがあります。本記事では、分かりやすさのため必要に応じて「耐性ウイルス」という表現も使用します。
 

日本感染症学会からの提言

ゾフルーザの耐性ウイルスが高確率で検出されていることを受け、日本感染症学会は2019年10月に「~抗インフルエンザ薬の使用について~」という提言を発表しました。その中でゾフルーザの使用について、積極的な投与を推奨しない以下の表現がされました。

  • 12歳以上では、臨床データが乏しい中で、現時点では、推奨/非推奨は決められない。
  • 12歳未満の小児では、低感受性株の出現頻度が高いことを考慮し、慎重に投与を検討する。

 

耐性ウイルスについての報道

日本感染症学会からの提言が発表されるや否や、ゾフルーザの耐性ウイルスについてのニュースが各種メディアで報道されました。その結果「ゾフルーザは効かない」という誤解が一般の人にまで広まっていったのです。

ゾフルーザの耐性ウイルスがここまで大きなニュースになったのは、ゾフルーザへの関心が非常に高かったためです。特に医療現場では、従来のインフルエンザ治療薬とは異なる作用機序を持つ久しぶりの新薬として、ゾフルーザに大きな期待が寄せられていました。

耐性ウイルスを極端に恐れる必要はない3つの理由

現時点で耐性ウイルスは流行していない

現時点では、バロキサビルへの感受性が低下したウイルスが日本国内で広く流行している状況は確認されていません。国立健康危機管理研究機構(JIHS)の2025~2026年シーズンのサーベイランスでは、2026年8月6日時点で、バロキサビル低感受性株はA(H1N1)pdm09では107株中0株、A(H3N2)では1,155株中12株(1.0%)、B型では456株中0株でした。
(引用:国立健康危機管理研究機構(JIHS). 抗インフルエンザ薬耐性株サーベイランス データ更新日:2026年8月6日)
 

日本感染症学会からの提言が変更された

日本感染症学会は、その後に蓄積された臨床研究や疫学データを踏まえて提言を更新しています。
2026年9月時点で最新の「2025/26シーズンに向けて」の提言では、12歳以上の外来患者について、バロキサビルは抗ウイルス効果および臨床症状改善の点でノイラミニダーゼ阻害薬と同等、あるいはそれ以上の効果が期待できるとされています。特にB型インフルエンザでは、バロキサビルによる治療が推奨されています。
一方、小児、特に低年齢・低体重の患者では、バロキサビル投与後に低感受性株が出現する頻度が高いことが知られています。現行の電子添文では、体重20kg未満の小児については、他の抗インフルエンザ薬の使用も考慮したうえで、ゾフルーザを使用する必要性を特に慎重に判断するよう注意されています。

 

タミフル耐性ウイルスの歴史

耐性ウイルスの問題を考える上で参考になるのは、タミフルの効かない「タミフル耐性ウイルス」の歴史です。一時期、タミフル耐性ウイルスが高確率で検出され、ゾフルーザと同じく報道でも大きく取り上げられました。しかし、タミフル耐性ウイルスはその後散発的に認める程度となり、流行株に置き換わるようなことはなく、大きな問題となっていません。タミフルは、現在もインフルエンザに有効な薬として多く使われています。

 

まとめ

耐性ウイルスの存在が明らかになった以降も、ゾフルーザはインフルエンザ治療薬として国から正式に承認されています。そのため「ゾフルーザは効かない」という噂は誤った認識です。

1回の服用で治療が完結するゾフルーザは、従来の薬で生じていた「飲み忘れ」や「吸入の失敗」といった問題がなく、メリットの多い薬です。今後も、耐性ウイルスに関する正確な情報を確認しながら、適切に使用されることが望まれています。

吉野友祐氏のプロフィール画像

この記事の監修者

吉野友祐

【経歴】
・広島大学医学部卒業
・現在は帝京大学病院感染症内科所属
・帝京大学医学部微生物学講座教授
・専門は内科・感染症

【所属学会・資格】
・日本医師会 産業医
・日本内科学会 総合内科専門医
・日本感染症学会 感染症専門医
・ICD

【所属】
・帝京大学医学部微生物学講座 主任教授
・帝京大学アジア国際感染症制御研究所 所長
・帝京大学医学部附属病院感染症内科

【専門領域】
・薬剤耐性菌
・インフルエンザ
・HIV
・Clostridioides difficile


 

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【参考文献】

https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00067755
https://www.shionogi.com/content/dam/shionogi/jp/news/pdf/2020/02/200221.pdf

https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/content/900004360.pdf

https://www.niid.go.jp/niid/ja/influ-resist.html

https://www.kansensho.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=37

https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/guidelines/teigen_231130_nashi.pdf

 

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