イナビルとは?効果や副作用について薬剤師が解説
- 【読み】 いなびる
- 【呼称】 -
※2024年2月時点の情報を元に作成しています。
イナビル(成分名:ラニナミビル)とは
イナビルは製薬会社の第一三共によって開発された純国産のインフルエンザ治療薬です。粉末状の吸入薬で、インフルエンザウイルスが増殖する「のど」や「気管支」に集中的に作用するため、全身性の副作用が少ないとされています。類似薬の「リレンザ」が1日2回を5日間吸入しなければならないのに対し、イナビルは1回だけ吸入すれば治療が完結するため、利便性にも優れています。
対象となる病気・症状
インフルエンザウイルスが増殖する「のど」や「気管支」に集中的に作用しウイルスの増殖を抑え、A型またはB型インフルエンザウイルス感染症の症状を改善します。
また、感染者との接触など感染の可能性が生じた際に使用することで、A型またはB型インフルエンザウイルス感染症の発症を予防する効果もあります。
イナビルの治療効果
国内外で、従来から使用されているインフルエンザ治療薬の「オセルタミビル(タミフル)」と比較した臨床試験が行われています。イナビルを吸入した人の症状が「なし」または「軽度」になるまでの平均期間は約3日間(73時間)でした。それに対し、タミフルを使用した人も約3日間(73.6時間)で症状が「なし」または「軽度」となりました。このことから、タミフルに劣らない治療効果が確認されています。イナビルの使用によって、インフルエンザの症状は平均1~2日ほど早く改善されると報告されています。
イナビルの予防投与
インフルエンザを発症している人の同居人のうち、重症化のリスクが高いとされる65歳以上の高齢者や基礎疾患のある人では、ワクチン接種や感染予防対策の徹底に加え、イナビルなどのインフルエンザ治療薬を早い段階から積極的に予防投与することが推奨されています。
臨床試験の結果、インフルエンザを発症した人の割合はイナビルを予防投与した人で4.5%だったのに対し、予防投与しなかった人では12.1%で、予防効果が確認されています。
イナビルの使用方法
イナビルの用法・用量
治療
- ・成人・10歳以上の小児:40mg(2容器)を1回で吸入します。
- ・10歳未満の小児:20mg(1容器)を1回で吸入します。
- ・発症後、可能な限り速やかに使用を開始することが望ましいとされています。症状発現から48時間経過後に使用を開始した患者では、有効性を裏づけるデータが得られていません。
予防
- ・成人・10歳以上の小児:40mg(2容器)を1回で吸入します。また、20mg(1キット)を1日1回、2日間に分けて吸入することもできます。
- ・10歳未満の小児:20mg(1容器)を1回で吸入します。
- ・インフルエンザ患者に接触してから2日以内に使用を開始する必要があります。接触してから48時間以降に使用を開始した患者では、有効性を裏づけるデータが得られていません。
イナビルの使い方
1容器あたり有効成分が20mg含有されています。薬剤が2ヵ所にわけて充填されているため、1容器吸入する場合は合計2ヵ所、2容器吸入する場合は合計4ヵ所を吸入する必要があります。
医師に指示された用量を、以下の方法で吸入してください。
1. 薬剤トレーをスライドさせない状態で机などに軽く打ちつけ、容器内の薬を下に集めます。
2. 薬剤トレー①を矢印方向へ端までしっかりとスライドさせます。
3. 下を向かずに体を起こし、吸入口を奥までくわえて息を大きく吸い、2~3秒息を止めます。
4. 容器を口から外し、ゆっくりと息を吐きます。
5. 薬剤トレー②を矢印方向へ端までしっかりとスライドさせ、同じように吸入します。
6. 薬剤トレー①をスライドさせて、元の状態に戻します。
7. 薬の吸い残しを防ぐため、1~5の動作を再度行い、1容器分の吸入が完了です。
イナビルの使用上の注意
イナビルの副作用
頻度の高い副作用
以下の副作用が0.5%以上の確率で生じる可能性があります。症状が重篤な場合には使用を中止し、医師に相談してください。
- ・下痢
- ・肝臓の血液検査値(ALT)上昇(多くは無症状)
重大な副作用
稀ですが、以下の重大な副作用を起こす可能性があります。使用中に以下の症状があらわれた場合は、使用を中止し、すぐに受診してください。
- ・ショック、アナフィラキシー(皮膚の赤み、息苦しさ、嘔吐、意識朦朧など)
- ・異常行動(急に走り出す、徘徊するなど)
- ・中毒性表皮壊死融解症(TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、多形紅斑(皮膚や粘膜の水ぶくれ・ただれ、目の充血、皮膚の赤い斑点、発熱など)
イナビルの使用禁忌・併用禁忌
- ・イナビルの有効成分(ラニナミビル)に対して過敏症の既往歴のある人は使用できません。
- ・添加物として乳タンパクを含む乳糖が使用されているため、乳製品に対してアレルギーのある人は注意が必要です。アナフィラキシーがあらわれたとの報告があります。
イナビルと他の薬との飲み合わせ
イナビルとの併用が禁止されている薬やサプリメントは特にありません。飲み合わせに注意を払う必要がないのがイナビルのメリットのひとつです。
【参考文献】
https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/6250703G1022_1_19/
https://www.daiichisankyo.co.jp/media/press_release/detail/index_6235.html
https://asabu-heart.com/wp_asabu/wp-content/uploads/2019/11/863ae1f0759cd55ab69354e19910f751.pdf
【執筆者】
薬剤師:大西真理
ドラッグストア併設調剤薬局の薬剤師。薬局長として薬局全体の管理、教育等に従事し、管理薬剤師としても活躍。広域病院から地域密着型クリニックまで幅広い内容の処方箋応需経験を持つ。
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