イナビルとは?効果や副作用について医師が解説
- 【読み】 いなびる
- 【呼称】 -
※2026年9月時点の情報を元に作成しています。
イナビル(成分名:ラニナミビルオクタン酸エステル水和物)とは
イナビルは製薬会社の第一三共によって開発された純国産のインフルエンザ治療薬です。粉末状の吸入薬で、インフルエンザウイルスが増殖する「のど」や「気管支」に作用します。1回の投与で治療が完結します。
以下では、主にイナビル吸入粉末剤20mgについて解説します。イナビルには、このほかにネブライザで使用する吸入懸濁用160mgセット(治療用で、予防の適応はありません)があります。
対象となる病気・症状
インフルエンザウイルスが増殖する「のど」や「気管支」に集中的に作用しウイルスの増殖を抑え、A型またはB型インフルエンザウイルス感染症の症状を改善します。
また、感染者との接触など感染の可能性が生じた際に使用することで、A型またはB型インフルエンザウイルス感染症の発症を予防する効果もあります。
イナビルの治療効果
国内外で、従来から使用されているインフルエンザ治療薬の「オセルタミビル(タミフル)」と比較した臨床試験が行われています。成人第III相試験では、症状が「なし」または「軽度」になるまでの期間の中央値は、イナビル40mg群で73.0時間(95%信頼区間 68.4〜80.8時間)、オセルタミビル群で73.6時間(68.5〜83.3時間)でした。この試験は非劣性を検証したもので、イナビルのオセルタミビル(タミフル)に対する非劣性が示されました。
厚生労働省は、抗インフルエンザ薬を発症48時間以内に開始すると、発熱期間が通常1〜2日短縮するとしています。
イナビルの予防投与
原則的に予防投与はインフルエンザウイルス感染症を発症している患者の同居家族または共同生活者であって、次のいずれかに該当する方が対象とされています。
- 高齢者(65歳以上)
- 慢性呼吸器疾患または慢性心疾患のある方(ぜんそく、COPD、心不全など)
- 代謝性疾患(糖尿病など)をお持ちの方
- 腎機能障害のある方
これらの方では、ワクチン接種や感染予防対策に加え、医師の判断のもとで、早い段階からの予防投与が検討されることがあります。
臨床試験(インフルエンザ患者と同居する10歳以上の家族・共同生活者が対象)の結果、インフルエンザを発症した人の割合は、イナビル40mg単回投与群で4.5%(12/267例)、プラセボ群で12.1%(32/265例)で、相対リスク減少率は62.8%でした。
予防目的での使用は健康保険の給付対象外で、原則自費となります。予防投与を希望する場合は医師にご相談ください。
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イナビルの使用方法
イナビルの用法・用量
治療
- 成人・10歳以上の小児:40mg(2容器)を1回で吸入します。
- 10歳未満の小児:20mg(1容器)を1回で吸入します。
- 発症後、可能な限り速やかに使用を開始することが望ましいとされています。症状発現から48時間経過後に使用を開始した患者では、有効性を裏づけるデータが得られていません。
予防
- 成人・10歳以上の小児:40mg(2容器)を1回で吸入します。また、20mg(1容器)を1日1回、2日間に分けて吸入することもできます。
- 10歳未満の小児:20mg(1容器)を1回で吸入します。
- インフルエンザ患者に接触してから2日以内に使用を開始する必要があります。接触してから48時間以降に使用を開始した患者では、有効性を裏づけるデータが得られていません。
イナビル吸入粉末剤20mgの使い方
1容器あたり有効成分が20mg含有されています。薬剤が2ヵ所にわけて充填されているため、1容器吸入する場合は合計2ヵ所、2容器吸入する場合は合計4ヵ所を吸入する必要があります。
医師に指示された用量を、以下の方法で吸入してください。
1. 薬剤トレーをスライドさせない状態で机などに軽く打ちつけ、容器内の薬を下に集めます。
2. 薬剤トレー①を矢印方向へ端までしっかりとスライドさせます。
3. 下を向かずに体を起こし、吸入口を奥までくわえて息を大きく吸い、2~3秒息を止めます。
4. 容器を口から外し、ゆっくりと息を吐きます。
5. 薬剤トレー②を矢印方向へ端までしっかりとスライドさせ、同じように吸入します。
6. 薬剤トレー①をスライドさせて、元の状態に戻します。
7. 薬の吸い残しを防ぐため、1~5の動作を再度行い、1容器分の吸入が完了です。
イナビルの使用上の注意
イナビルの副作用
頻度の高い副作用
以下の副作用が0.5%以上の確率で生じる可能性があります。症状が重篤な場合には使用を中止し、医師に相談してください。
- 下痢
- 肝臓の血液検査値(ALT)上昇(多くは無症状)
重大な副作用
稀ですが、以下の重大な副作用を起こす可能性があります。使用中に以下の症状があらわれた場合は、使用を中止し、すぐに受診してください。
- ショック、アナフィラキシー(皮膚の赤み、息苦しさ、嘔吐、意識朦朧など)
- 異常行動(急に走り出す、徘徊するなど)
- 中毒性表皮壊死融解症(TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、多形紅斑(皮膚や粘膜の水ぶくれ・ただれ、目の充血、皮膚の赤い斑点、発熱など)
- 気管支攣縮、呼吸困難(運動時の咳、息苦しさ、呼吸がヒューヒューする、胸の圧迫感など)
イナビルの使用禁忌・併用禁忌
- イナビルの有効成分(ラニナミビルオクタン酸エステル水和物)に対して過敏症の既往歴のある人は使用できません。
- 添加物として乳タンパクを含む乳糖が使用されています(添付文書9.1.1)。禁忌ではありませんが、乳製品に対してアレルギーのある人は注意が必要です。アナフィラキシーがあらわれたとの報告があります。
イナビルと他の薬との飲み合わせ
イナビルとの併用が禁止されている薬やサプリメントは特にありませんが、経鼻弱毒生インフルエンザワクチンとの併用には注意が必要です(添付文書10.2)。
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この記事の監修者
吉野友祐
【経歴】
・広島大学医学部卒業
・現在は帝京大学病院感染症内科所属
・帝京大学医学部微生物学講座教授
・専門は内科・感染症
【所属学会・資格】
・日本医師会 産業医
・日本内科学会 総合内科専門医
・日本感染症学会 感染症専門医
・ICD
【所属】
・帝京大学医学部微生物学講座 主任教授
・帝京大学アジア国際感染症制御研究所 所長
・帝京大学医学部附属病院感染症内科
【専門領域】
・薬剤耐性菌
・インフルエンザ
・HIV
・Clostridioides difficile
【参考文献】
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00058821
https://www.daiichisankyo.co.jp/media/press_release/detail/index_6235.html
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