月経困難症に対するピル治療薬の効果などを解説
- 【読み】 げっけいこんなんしょう
- 【呼称】 -
月経困難症は月経のある女性の約3割に認められていると言われていますが、症例数が多いからといって異常ではないということではありません。むしろ、多くの女性が月経困難症からくる痛みや多数の症状を日常的に我慢しており、体調を崩したり日常生活で不便を感じたりしている実態が浮かびあがっています。また、月経困難症の約半数には器質性疾患があることが報告されており、そのまま我慢し続けていると不妊症などにつながる恐れもあります。
今回は、月経困難症に伴っている可能性がある疾病について、また、月経困難症の治療薬ピルの種類について解説します。
月経困難症は治療を要する病気
「月経時の痛みは仕方がないものだから、痛み止めを飲んで我慢しよう」「みんな月経でつらい思いをしてるんだし、私だけじゃないから……」
このように月経時の痛みや苦しみを我慢している女性は非常に多いです。しかし、月経困難症は生理痛、腰痛、頭痛、不安感情、めまい、吐き気、無気力、うつ感などさまざまな症状を引き起こす可能性があり、また、仕事や学業に集中できないなど日常生活に支障をきたすほど重大なものです。痛み止めを飲まないと体がしんどいといった場合は、無理に我慢をしないで医療機関を受診してください。
子宮内膜症を起こしている可能性がある
月経困難症の裏ではさらに重大な疾病が隠れていることがあります。そのひとつが子宮内膜症です。子宮内膜症を発症している患者さんの約8割に月経困難症が認められると言われています。
子宮内膜症とは、本来は子宮内部に存在しているはずの子宮内膜に近い組織が、子宮の表面や卵巣、骨盤内など子宮の外側にできてしまうものです。子宮の内部であれば月経時の出血によって内膜は排出されますが、子宮外でできてしまうと排出先がないため、腹部に溜まっていってしまい、ひどい痛みや炎症を引き起こすことがあります。また、子宮内膜症は不妊症の原因になることがあります。
子宮内膜症は女性ホルモンの一種、エストロゲンによる影響が大きい疾患で、エストロゲン分泌量が多くなったり少なくなったりすることによって内膜症は進行していきます。
子宮内膜症は手術が必要な場合も
子宮内膜症の治療には手術療法と薬物療法の2種類があります。
不妊症があるかどうか、また、病巣の大きさ、痛みの軽減、患者さんの年齢、月経時の出血量コントロール、症状の重さや進行具合など、いくつかの要素を合わせてどちらの療法が適しているかを判断する必要があります。
手術療法は大まかに言えば、妊娠を望む場合は病巣のみを切除、妊娠を望まない場合は卵巣や卵管、場合によっては子宮を摘出するといった内容になります。最近は腹腔鏡という内視鏡を見ながら手術を行い、チョコレート嚢胞をレーザーで除去するといった手術方法も可能になっています。手術療法は患部を的確に除去できるというメリットがありますが、術創が残ったり身体的・経済的な負担が大きいといったデメリットもあります。
月経困難症の治療薬「ピル」
最近は、月経困難症に対して低用量ピルが効果を持つことが周知されてきています。ピルを服用することで、生理痛や生理不順の改善、過多月経と貧血の改善、卵巣がんや子宮体癌のリスク低下、避妊など、女性の体の負担を減らしてくれるさまざまな効果が確認されています。
ピルは排卵を抑える効果がある
月経は、2つの女性ホルモン「エストロゲン」と「プロゲステロン」の分泌によってリズムが生まれます。体温を上げる作用のあるプロゲステロンの分泌が収まってゆくと生理期間が始まり、体温の低下や生理痛、体の痛み、憂鬱な感情といった月経困難症の症状が現れてきます。不要になった子宮内膜を月経で排出し、生理期間が終わりに近づくと、エストロゲンの分泌が増えてきて排卵の準備を整えていくというサイクルです。
月経困難症の治療薬として処方される低用量ピルは、エストロゲンとプロゲステロンが低用量配合されており、服用することで体内のホルモンバランスに働きかけます。
通常、女性ホルモンの分泌は脳の司令塔である視床下部がコントロールしています。しかし、ピルを風教すると、脳は「体内に黄体期と同じようにホルモンが出ている状態だから、ホルモン放出の指令を出す必要がないのだ」と勘違いします。この結果、排卵が止まり、内膜が厚くならず、内膜がはがれるときの子宮収縮の痛みや出血も起こらなくなります。
服用方法
低用量ピルは錠剤の飲み薬で、1日1錠、毎日決まった時間に飲みます。
原則として月経初日から飲み始めて、21日間毎日続けます。21日分を飲み終わったら、7日間は休薬します(ピルは21錠タイプと28錠タイプがあります。28錠タイプはそのうち7錠がプラセボ=偽薬で、飲み忘れを予防するためのものです)。
ピルを1日でも飲み忘れると排卵する可能性があります。24時間以内の飲み忘れであれば、気づいた時点で飲み忘れた分を服用しましょう。1日2錠の服用でも問題はありません。もし、2錠以上の飲み忘れがあったら、服用を一旦中止して、生理が始まってから新しい錠剤シートを開始することになります。
基本的に飲み忘れは厳禁であり、服用期間中に旅行や外泊をする場合は、必ず忘れないよう携行していくことを覚えておきましょう。
ピルの種類(1)OC
低用量ピルにはOCとLEPという2種類があります。そのうちOC(Oral Contraceptives)は低用量経口避妊薬で、正しく服用すればほぼ100%に近い避妊効果を発揮します。
OCは生理痛の改善、生理量・周期のコントロール、PMS(月経前症候群)の症状改善、婦人科系の癌の発症率低下などの効果が期待できます。安全にOCを使用するために、初診時には複数種類の検査が行われます。
OCは保険適用にならない
基本的にOCは避妊を目的とした薬であるため、保険が適用されません。全額が自費負担になり、また医療機関によって処方の料金設定が異なります。
ピルの種類(2)LEP
もうひとつのピル、LEP(Low dose Estrogen Progestin)は低用量エストロゲン・プロゲステロン配合訳です。
成分そのものはOCとほぼ同じなのですが、LEPは月経困難症と子宮内膜症の治療薬として認められており、避妊目的のOCとは別物の扱いです。LEPの使用には医師による診断が必要で、問診、内診、血液検査、腹腔鏡検査、MRIなどの検査を伴います。
LEPは保険適用になる場合がある
LEPは、月経困難症や子宮内膜症の治療薬として使用する場合は保険が適用されます。ただし、避妊目的の薬としては処方を受けられません。
ピルは婦人科・産婦人科で処方可
現在、日本では低用量ピルは市販で売られていません。通販で販売されているのを見かけることがありますが、海外から個人輸入した医薬品を売っているサイトは薬機法違反になります。また、低用量ピルと偽ってまったく別のものを売っている可能性もあるので、購入しないようにしてください。
低用量ピルは婦人科・産婦人科で処方してもらえます。一部の内科やオンライン診療で処方してもらえることがありますが、子宮の内診など専門的な定期検査が必要になることがあるため、婦人科や産婦人科を受診することをおすすめします。
月経の痛みは我慢せずにクリニックで受診を
月経困難症は子宮内膜症などの重大な病気のサインになっていることがあります。また、そうでなくても、重い生理痛や体の痛み、月経前後の精神状態の乱れなど、月経困難症そのものによって日常生活が不便になっていると感じているなら、婦人科や産婦人科を受診すると良いでしょう。
現代人は昔よりも女性の平均寿命が長くなり、一生の間に経験する月経の回数が増えています。それにともなってさまざまな婦人科系のリスクも増えていますので、健やかにつらくない日常を長く過ごしていくためにも、まずはお気軽に医療機関に相談してみてくださいね。
【執筆者】
医師:木村眞樹子
都内大学病院で循環器内科および内科として在勤中。 内科・循環器科での診察、治療に取り組む一方、産業医として企業の健康経営にも携わっている。
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