舌下免疫療法は効果ないって本当?持続期間・副作用や体験談まとめ
- 【読み】 ぜっかめんえきりょうほう
- 【呼称】 -
アレルギー性鼻炎の治療法にはいくつか種類があります。そのひとつが「舌下免疫療法」と言い、近年この治療法を選択する患者さんが増えてきています。「体質そのものを改善してアレルギー性鼻炎を治療できる」といった、さまざまなメリットの話が聞こえていますよね。
それでは、舌下免疫療法は他の治療法とはどのような違いがあるのでしょうか?メリット・デメリットにはどのようなものがあるのでしょうか?本記事では、舌下免疫療法の効果や副作用、実際に使用した人の体験談などをまとめてご紹介します。また、アレルギー性鼻炎の発症のメカニズムもご説明しますので、お悩みの方はぜひ最後までお読みください。
舌下免疫療法とは
まずは舌下免疫療法とは何かを解説します。
アレルゲン免疫療法のひとつ
アレルギー性鼻炎とは、アレルギーを引き起こす原因物質(アレルゲン)が体内に侵入した際に鼻などの粘膜を刺激し、異物を排除するための働きが過剰になって、鼻水や鼻づまり、くしゃみといった鼻炎症状が続く状態のことを言います。
アレルギー性鼻炎の治療法には、アレルゲンと日常的に可能な限り接触しないことをはじめ、薬物療法、手術療法、アレルゲン免疫療法などがあります。このアレルゲン免疫療法のひとつに「舌下免疫療法」が含まれます。
舌下免疫療法が注目される理由
舌下免疫療法は、スギ花粉やダニなどによるアレルギー性鼻炎の症状を長期にわたって寛解させることができる可能性がある唯一の方法と考えられています。
点鼻薬や内服薬などを用いる薬物療法は対症療法であり、あくまで症状を抑え込む治療法です。それに対して舌下免疫療法は、体質そのものをアレルギー症状が出にくいように根本から改善してくれて、鼻炎症状を治したり軽減させる効果が期待できるのです。
アレルギー性鼻炎について
なぜアレルギー性鼻炎に舌下免疫療法が効果的なのかの説明に入る前に、まずアレルギー性鼻炎への理解を深めてみましょう。
アレルギー性鼻炎のタイプ
アレルギー性鼻炎には、花粉の季節にだけ症状が見られる「季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)」と、1年を通じて発症がある「通年性アレルギー性鼻炎」があります。
季節性アレルギー性鼻炎を引き起こす花粉は、スギ・ヒノキ・ブタクサ・シラカンバ・イネ・ヨモギなどがあり、ほぼ一年中何かの花粉が飛んでいます。春先のスギ花粉による花粉症がよく知られており、鼻炎症状が出るのが春ではないと「これは花粉症じゃない」と考える方もいらっしゃいますが、実は花粉症だったというケースが少なくありません。
通年性アレルギー性鼻炎は、ダニやハウスダスト、犬や猫の毛が原因になりやすいです。
主な症状の内容
くしゃみ、鼻づまり、さらさらした透明の鼻水などが主な症状です。
連続で何回もくしゃみが出る、鼻を頻繁にかむことで肌が荒れたり血が出たりする、目がかゆくなって腫れる、涙が止まらない、頭がボーっとして集中力が落ちて仕事や学業に差しさわりが出る、といった二次的な影響もあります。
どのように発症するか
アレルギー性鼻炎は、スギ花粉やハウスダストなどのアレルゲンが鼻の粘膜に付着すると、異物が侵入したと判断した体が抗体をつくり、マスト細胞と結合します。
次に同じアレルゲンが体内に入ると、肥満細胞からアレルギー誘発物質(ヒスタミンなど)が放出。これらの化学伝達物質が鼻の神経や血管を刺激してくしゃみや鼻水を引き起こし、鼻づまりを生じると考えられています。
舌下免疫療法による治療方法
それでは、舌下免疫療法について、効果を起こす仕組みや治療の流れなどを詳しく見ていきましょう。現在、スギ花粉症およびダニアレルギー性鼻炎に対する治療として行われています。
舌下免疫療法が効く仕組み
舌下免疫療法では、アレルゲンを少量ずつ摂取することで体を慣らし、過剰な免疫反応を起こさないようにする、あるいは和らげるという治療法です。
アレルゲン免疫療法の効果発現メカニズムはまだ十分に解明されていません。現在は、普段の生活で自然に触れる量よりも多くのアレルゲンを体内に取り込むことにより、過剰な免疫反応を抑える制御性T細胞が活性化し、アレルギー反応を促進するTh2細胞を抑制します。また、アレルギー反応を抑えるTh1細胞と、抗原特異的IgGとIgAが増加することで、アレルギー反応が抑えられるようになると推測されています。
期待できる効果
舌下免疫療法を含むアレルゲン免疫療法では、現在では患者さんの約80%に有効性があると確認されています。くしゃみや鼻水、鼻づまりといった症状が長期にわたって寛解、軽減されています。
治療は長期にわたって継続する必要がありますが、症状を抑えてくれることで、アレルギー治療薬を減量できたり、生活の質(クォリティ・オブ・ライフ)を改善してくれたりといったメリットもあります。
治療の流れ
まず問診と血液検査・皮膚テストで、患者さんのアレルゲンを特定します。舌下免疫療法の具体的なやり方は、治療薬を舌の下に置いて、1~2分そのまま保持した後に飲み込みます(1日1回の舌下面投与)。その後、約5分間は飲食およびうがいは避け、投与前後2時間ほどは入浴・飲酒・激しい運動を行わないようにします。
初回は医師の監視下で投与しますが、翌日からは患者さん本人が自宅で服薬できます。なお、舌下免疫療法は保険適用の治療法です。
舌下免疫療法の効果は?
続いて、気になる治療期間や効果の持続期間について解説します。
服用期間はどのくらい?
最低でも2年間、一般的には3~5年は継続する必要があり、長期にわたった治療になります。また、最初の1年間は半月に一度の通院、2年目からは1カ月ごとに通院する必要があります。
効果はいつからいつまで続く?
服用開始から1年ほどでも効果は十分に感じられますが、5年ほど継続するとほぼ完治したと実感できる方が多いようです。ただし、完治後に治療をやめると、何年か経つと効果が次第に薄れてくることがあります。
舌下免疫療法を利用した人の体験談
舌下免疫療法を実際に行っているアレルギー性鼻炎の患者さんからは、「夜中に鼻づまりや咳込みで起きてしまうほど重い花粉症だったけど、舌下免疫療法を始めてまだ1年ほどですが効果が感じられました」「花粉症の市販薬は利かなかったのに、舌下免疫療法を始めたら、スギ花粉の時期になってもマスクをつけなくて大丈夫になった」といった効果を実感する声が出ています。
舌下免疫療法の副作用は?
最後に、舌下免疫療法の安全性について確認しましょう。副作用はあるのでしょうか?
副作用1:咳やかゆみ
舌下免疫療法の副作用としては、咳や喉の不快感、口腔内のかゆみや腫れ、唇の腫れといったものがあります。
副作用2:アナフィラキシー
重大な副作用としては、アナフィラキシー(医薬品などに対する急性の過剰反応で、皮膚症状や消化器症状、呼吸器症状、意識障害などが起こる)の可能性があります。
副作用が起こる確率
軽度の副作用は、15~20%の確率で起こると言われています。アナフィラキシーショックが起こる確率はかなり低いですが、ゼロではありません。
舌下免疫療法を利用できない人
気管支喘息や口腔内に傷・炎症がある方、がんなどの免疫系疾患のある方、全身ステロイドなどの一部の薬で治療中の方、重症の心臓・肺の疾患がある方、高血圧の方、妊婦・授乳婦の方は舌下免疫療法を受けられない場合があります。また、5歳未満の小児も対象外です。
まとめ
舌下免疫療法は、体質そのものを改善して、スギ花粉症やダニアレルギー性鼻炎の症状を根本から治療できます。安全性が高く、5歳以上のお子さんでも利用できる保険適用の治療法です。
ただし治療は長期にわたります。また、治療法は、病気の重症度やタイプ、そして患者さん自身のライフスタイルなどを考慮に入れて選ぶことになります。ご自分はもちろん家族の症状が気になるという方も、ぜひ一度、舌下免疫療法について医師に相談してみてください。
【執筆者】
医師:木村眞樹子
都内大学病院で循環器内科および内科として在勤中。 内科・循環器科での診察、治療に取り組む一方、産業医として企業の健康経営にも携わっている。
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