※この情報は2021年2月時点での情報です。制度などの情報については必ず公式発信情報をご確認ください。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の院内等での感染拡大を防ぎながら、地域で求められる医療を提供することができるように、国から感染拡大防止対策や診療体制確保などに要する費用の補助が拡充されています。
薬局に向けては「医療機関・薬局等における感染拡大防止等支援事業」における上限70万円までの補助金に加えて、「令和2年度新型コロナウイルス感染症感染拡大防止・医療提供体制確保支援補助金」における上限20万円までの補助金の支給が決定しています。
この記事では、各制度の概要や対象となる医療機関、補助金の申請方法、注意点について解説していきます。
◆「医療機関・薬局等における感染拡大防止等支援事業」とは
「医療機関・薬局等における感染拡大防止等支援事業」について、概要や補助の対象となる医療機関について確認していきます。
感染拡大を防ぐための取組の例についても、合わせてみていきましょう。
「医療機関・薬局等における感染拡大防止等支援事業」の概要
新型コロナウイルス感染症の感染拡大と収束が反復する中で、医療機関・薬局等においては、それぞれの機能・規模に応じた地域における役割分担の下、必要な医療提供を継続することが求められています。
感染拡大を防ぎながら、地域で求められる医療を提供するためには、設備費や人件費、研修費などのさまざまな費用が必要となるため、費用面における支援を行うことが本事業の概要です。
補助の対象となる医療機関および上限額は?
補助の対象となる医療機関および上限額は、以下の通りです。
薬局は「薬局、訪問看護ステーション、助産所」に分類されており、70万円を上限に補助が行われます。
補助の対象となる経費としては、▽感染拡大防止対策に要する費用や、▽院内等での感染拡大を防ぎながら地域で求められる医療を提供するための診療体制確保等に要する費用(「従前から勤務している者及び通常の医療の提供を行う者に係る人件費」は対象外)などが一例として挙げられます。
感染拡大を防ぐための取り組みの例
厚生労働省のマニュアルによると、感染拡大を防ぐための取り組みの例として、以下のものが例示されています。
ただし、以下は一例であり、これらに限られるものではありません。
抜粋:「医療機関・薬局等における感染拡大防止等支援事業」医療機関等の申請マニュアル~医療機関等用~│p16
◆補助金の申請方法は?
ここでは、補助金を申請するための流れや注意点について、確認していきます。
※都道府県により事務の詳細が異なる可能性があるため、詳細は各都道府県のホームページ等を参照してください。
補助金申請の流れ
補助金を申請するための流れは、下記の通りです。
1 、対象機関において、感染拡大を防ぐための取り組みを行う
補助の対象となる医療機関であることを確認した上で、新型コロナ感染症の院内等での感染拡大を防ぐための取り組みを行います。
感染拡大防止対策や診療体制確保等に要する費用について、幅広く対象となりますが、「従前から勤務している者及び通常の医療の提供を行う者に係る人件費」は対象外であることに注意が必要です。
2 、補助の対象経費を計算する
令和2年4月1日から令和3年3月31日までにかかる費用が対象となります。
費用は以下の例を参考に、項目ごとに分類することが必要です。
支出済みの費用だけでなく、申請日以降に発生が見込まれる費用も合わせて、概算額で申請することも可能ですが、概算額で申請した場合には事後に実績報告が必要となるため、領収書等の証拠書類の保管が求められています。
【参考】各対象科目に該当する費用の例
抜粋:「医療機関・薬局等における感染拡大防止等支援事業 Q&A」 新潟県庁
3 、申請書等を作成し、提出する
所定の様式により、申請書及び事業計画書を作成します。
作成方法については、厚生労働省のマニュアルを参照してください。
作成した書類は、各都道府県の国民健康保険団体連合会(以下「国保連」)に、原則としてオンライン※により提出します。
都道府県が申請内容を確認後、交付の認定が行われ、各都道府県の国保連から補助金が振り込まれます。
※オンライン請求システム未導入の医療機関等は、専用の「WEB申請受付システム」からの申請が可能です。
ネット環境に対応していない場合は、電子媒体(CD等)により、国保連に郵送が必要です。
補助金申請における注意点
補助金申請における注意点としては、以下のものが挙げられます。
*申請受付期間が決まっている
申請受付期間は申請の方法に関わらず、診療報酬提出時期と重ならないようにするため、毎月15日から月末までの間となります。
また、補助金の対象は、令和2年4月1日から令和3年3月31日までにかかる費用に限られますが、申請の最終受付は令和3年2月28日となります。
*各医療機関からの申請は1回限り
補助金の申請には、対象期間中に見込まれる費用についての「概算交付申請」と、申請時に支出済みの費用についての「精算交付申請」の2種類がありますが、各医療機関の申請についてはこれらを合わせて1回限りとなります。
対象とならない経費が含まれていた場合など、概算で交付した補助金額が交付すべき確定額を上回るときは、その上回る額の返還が求められます。
*領収書等の証拠書類の保管が必要
補助金を申請する際には、領収書等の証拠書類の保管が求められます。
概算交付申請を行った場合においても、実績報告の際に領収書等の証拠書類が必要となります。
◆薬局には20万円の追加支給が決定!「令和2年度新型コロナウイルス感染症感染拡大防止・医療提供体制確保支援補助金」とは
厚生労働省は令和3年2月3日、事務連絡として「令和2年度新型コロナウイルス感染症感染拡大防止・医療提供体制確保支援補助金について」を都道府県に発出しました。
薬局においては、20万円を上限に補助金の支給が決定しています。
事業の概要や補助の対象となる医療機関および上限額、申請が間に合わない場合の対応について、確認していきましょう。
「令和2年度新型コロナウイルス感染症感染拡大防止・医療提供体制確保支援補助金」の概要
「医療機関・薬局等における感染拡大防止等支援事業」と同様に、医療機関・薬局等において、院内等での感染拡大を防ぎながら地域で求められる医療を提供することができるように、緊急的臨時的な対応として、感染拡大防止等の支援を行うことが本事業の概要です。
こちらの補助金は、令和3年1月28日に成立した2020年度第3次補正予算に盛り込まれたもので、令和2年度第2次補正予算による「医療機関・薬局等における感染拡大防止等支援事業」の補助を受けた医療機関等も対象となります。
補助の対象となる医療機関および上限額は?
補助の対象となる医療機関および上限額は、以下の通りです。
※1 診療・検査医療機関(仮称)および病院・有床診療所(医科、歯科)のいずれにも該当する医療機関は、いずれか一方のみ
※2 ただし、保険薬局でない薬局は補助の対象外
補助の対象となる経費としては、令和2年12月15日から令和3年3月31日までにかかる感染拡大防止対策や診療体制確保等に要する費用が対象となります。
前回と同様に、感染拡大防止対策に要する費用に限られず、院内等での感染拡大を防ぎながら地域で求められる医療を提供するための診療体制確保等に要する費用について、幅広く対象となることが特徴です。
申請が間に合わない場合は令和3年度実施分へ
こちらの補助金は、令和2年度事業の申請期限である令和3年2月28日(当日消印有効)までに申請書を提出した医療機関等には、審査を行った上で令和2年度分として交付決定が行われます。令和2年度事業の申請期限に申請が間に合わない医療機関等への対応については、令和3年度に実施される予定となっています。(令和3年度実施分の詳細は、後日改めて示される予定です。)
なお、令和2年度事業の補助を受けた医療機関等は、令和3年度実施分では対象外となります。
申請が間に合わない場合や、令和3年4月1日以降の経費について申請を希望する場合においては、令和3年度実施分により申請することを検討してみてはいかがでしょうか。
◆まとめ
新型コロナウイルス感染症の感染拡大が続く中で、薬局を含めた医療機関における感染拡大防止対策の重要性が注目されています。
設備の導入には多額の費用が必要となる場合もありますが、国が用意している補助金を利用することで、費用面の負担を軽減することが可能となります。
補助の対象となる費用は幅広く、申請方法も容易であるため、積極的に利用してみてはいかがでしょうか。
また、これらの補助金について不明点がある場合には、厚生労働省医政局の新型コロナ緊急包括支援交付金(医療分)に関するコールセンターへ問い合わせるようにしてください。
○ 厚生労働省医政局 新型コロナ緊急包括支援交付金コールセンター
・電話番号:0120-786-577
・受付時間:平日の9時30分~18時
【参考文献】
医療機関における感染拡大防止等支援事業(支援金)について|熊本県
「医療機関・薬局等における感染拡大防止等支援事業」 のご案内|厚生労働省
「令和 2 年度新型コロナウイルス感染症感染拡大防止・ 医療提供体制確保支援補助金」のご案内|厚生労働省
診療・検査医療機関の感染拡大防止等の支援|厚生労働省
令和2年度新型コロナウイルス感染症感染拡大防止・医療提供 体制確保支援補助金に関するQ&A |厚生労働省
令和2年度新型コロナウイルス感染症感染拡大防止・医療提供体制確保支援補 助金の交付について |厚生労働省
【執筆者】
薬剤師:安永 裕矢
製薬会社勤務を経て、現在大手ドラッグストアの管理薬剤師として現在に至る。薬剤師の視点から様々なWEBメディアで執筆を行っている。