多くの調剤薬局では、病院やクリニックと同様に、初めて薬局に来た患者さんに対して問診票を記入してもらっています。
問診票は患者さんに安心してお薬を飲んでもらうために大切な情報源になります。
業務で役立つ問診票にまつわる情報やよくある疑問について、まとめました。
問診票の主な質問内容
・症状や診断名
・今までお薬を飲んで副作用が起きたことはあるか
・食べ物や花粉、ハウスダストなどのアレルギー情報
・体質(下痢、便秘、冷え性など)
・ほかに治療中の病気
・ほかに服用中の薬(医療用・一般用・サプリメント等)
・飲みづらいと感じる剤形
・喫煙、飲酒の有無
・(女性のみ)妊娠、授乳の有無
・(小児のみ)体重
・その他、疑問点や不安なこと
・ジェネリック医薬品を希望するか
…など
問診票に関する患者さんからよくある質問
【なぜ問診票を書くのか】
お薬を使う患者さんの体質や、過去に使ったお薬による副作用発現や体調の悪化の確認、ほかのお薬や食品等との飲み合わせを確認することで、より安全に、安心して服薬をするためです。
【病院で書いたのに、また書かなければならないのか】
現在、日本では「医薬分業」が推進されています。医薬分業とは、薬の処方を医師が行い、調剤を薬剤師が行うことで、仕事を分担することです。問診を別々に行うというのも医薬分業の一環です。医師と薬剤師がそれぞれで問診を行うことにより、ダブルチェックができるため、患者さんの健康に危険を及ぼすリスクを減らすことができます。
また、今の日本の医療制度では個人情報を保護するために患者さんの了解無しに、無断で患者さん個人の医療情報を他の医療機関や薬局に提供することはできません。そのため、病院で問診を受けている場合でも、再度調剤薬局で問診票の記入を行う必要があります。
【お薬手帳を持っている場合、問診票は書かなくて良いか】
お薬手帳は、問診票の記載を省略できたり、既往歴の把握による安全性の確保のために大切な情報になります。処方箋と一緒に受付に提出するようにしましょう。
ただし、お薬手帳では把握しきれない情報もあるため、お薬手帳を持っている場合でも、問診票の記入は別途必要です。
【毎回同じ薬なのに問診票を書く必要性とは】
その時の体調や継続期間、他の薬との飲み合わせにより、同じお薬の継続でも安全が担保されているわけではありません。そのため、初めて行く薬局での問診票の記入や、毎回のお薬手帳の提示はは必要不可欠です。
問診票に関わる対応
【問診票の記入に抵抗がある患者さんへの対応】
薬局に訪れる患者さんの特性は様々です。身体の問題でうまく文字が書けなかったり、書くことが面倒であったり、自分の個人情報や治療の内容はデリケートな話題なので記入に抵抗がある患者さんもいるかもしれません。その場合、無理に書いてもらおうとすると、その後の服薬指導や今後の関係性の構築に響いてしまいかねません。
まずは、上記の理由で問診票を書いていただきたい、という旨の説明を丁寧に行った後、患者さんの意向を把握することが望ましいです。
もし、問診票への記入に抵抗がある場合は、服薬指導の際にさりげなくヒアリングを行うなど、臨機応変な対応が必要です。
【問診票を書いてもらえなかった場合の対応】
患者さんが薬剤師に情報を提供することは義務ではない一方で、薬剤師が患者さんの情報を収集することは薬剤師法で義務付けられています。そのため、患者さんが問診票に回答しなかった場合は、薬剤師側の働きかけによるヒアリングや、患者さんの様子の観察により、出来る限りの情報収集に努めなければなりません。また、必要に応じて処方医への問い合わせも検討するべきでしょう。
薬の製造工程で不備が見つかるなど、調剤済みの薬も含めて製薬メーカーから回収指示が出る場合もあります。問診票を拒否された場合でも、電話番号などの連絡先だけは何とか聞きだしておきたいところです。
[参考文献]
厚生労働省 「処方箋の交付等に関連する法令の規定」処方箋の交付義務 医師法第22 条
【監修薬剤師】
薬剤師:大西真理
ドラッグストア併設調剤薬局の薬剤師。薬局長として薬局全体の管理、教育等に従事し、管理薬剤師としても活躍。広域病院から地域密着型クリニックまで幅広い内容の処方箋応需経験を持つ。